第6回日本臨床腫瘍学会学術集会 2008年4月8日

第6回日本臨床腫瘍学会学術集会
悪性リンパ腫の治療戦略をアップデートする【臨床腫瘍学会2008】
八倉巻尚子=医学ライター 2008. 4. 8

 「“悪性リンパ腫”といっても一括りにはできない。非常に多様な腫瘍であり、どのようなリンパ腫なのかを知らなければ治療方針は立たない」──。福岡大学筑紫病院内科第二の鈴宮淳司氏(准教授、診療部長)は、福岡市で開催された第6回日本臨床腫瘍学会学術総会(3月20~21日)の教育セッション「悪性リンパ腫に対する標準的治療」でこう強調した。

 リンパ腫とはリンパ球に由来する悪性腫瘍の総称であり、WHO分類で病型は約30種類もある。その治療法も病型や病期などでそれぞれ異なるが、悪性リンパ腫の中で最も患者数の多い、びまん性大細胞B細胞性リンパ腫など、一部のリンパ腫では標準的治療が確立しつつある。

罹患率は10万人あたり10人

 悪性リンパ腫は組織型からホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の二つに分けられる(下表参照)。非ホジキンリンパ腫は細胞系統によって、B細胞性リンパ腫と、T/NK細胞性リンパ腫に分類され(WHO分類)、さらに増殖スピードによって低悪性度(indolent lymphoma)、中高悪性度(aggressive lymphoma)、高高悪性度(highly aggressive lymphoma)に、発生部位によってリンパ節(節性)とリンパ節以外(節外性)に細かく分類されている。

 日本では欧米に比べてホジキンリンパ腫の割合が約5~10%と少なく、T細胞性リンパ腫の割合が高いのが特徴だ。悪性リンパ腫の発症数は世界的にも増加傾向にあり、節性リンパ腫は年に約2%、節外性リンパ腫は年に約5%も増加するといわれている。「年間発症率は、欧米では10万人あたり20人、日本でも10万人あたり10人と、日本の罹患率は食道癌よりすこし少ない程度」と鈴宮氏はいう。子宮頸癌などの婦人科癌も同程度であり、悪性リンパ腫の発症率は決して低いとはいえない状況だ。

 鈴宮氏によれば、現在のところ標準的治療が確立しているのは、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫のびまん性大細胞B細胞性リンパ腫で、濾胞性リンパ腫、リンパ芽球リンパ腫、バーキットリンパ腫、胃マルトリンパ腫、慢性リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病などに準標準的治療があるという。以下、これら病型に対する治療法を紹介する。

■ 濾胞性リンパ腫

 低悪性度リンパ腫である濾胞性リンパ腫では、限局期に対しては病変部放射線治療を行うが、進行期に対しては「R-CHOP療法が準標準的治療」(鈴宮氏)と位置づけられている。

 また濾胞性リンパ腫においても、イブリツモマブによる地固め療法で部分寛解から完全寛解へ転化し、無治療群に比べて、無増悪生存期間が有意に延長することが、第Ⅲ相臨床試験(FIT試験)で示された。イブリツモマブが濾胞性リンパ腫の標準的治療の1つになるかどうか、今後の成果が待たれる。
 
 
 
 
 

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