患者様へ
ノイトロジン®注およびエポジン®注の回収のお知らせ
このたび弊社では、下記の理由でノイトロジン®注*およびエポジン®注**の一部製品を自主回収することにいたしました。
患者様には大変ご迷惑をお掛けし誠に申し訳ございません。深くお詫び申し上げます。以下状況をご説明申し上げます。
ノイトロジン®注およびエポジン®注の製造過程の細胞培養***の段階において、ウシ胎仔血清(FCS)を培地****に栄養素として少量添加しております。2004年7月5日制定・施行の生物由来原料基準の改正にともないFCSの原産国の切り替えが求められ、弊社ではこれに準拠するために(1)培養段階では、非米国産FCS(豪州産FCS)のみを使用することとし、それとともに(2)既に製造されていた有効成分(原薬)については、米国産FCSを用いた原薬を確認し該当の原薬を破棄したと認識しておりました。
しかしながら、本年2006年6月5日の医療機関からの問い合わせをきっかけに再調査を行った結果、原産国の切り替えが求められる以前に製造された原薬のうち、当初の調査結果(2003年12月)で「豪州産FCS使用」とされていた原薬の一部で米国産FCSを使用していたことが判明いたしました[確認日:ノイトロジン®注 6月9日、エポジン®注 6月10日]。この誤った調査結果が原因となり、当該米国産FCS使用の原薬を用いた製品の一部が上記基準の猶予期間+を超えて混在し、出荷されておりました。弊社では、該当する製品をただちに出荷停止(6月12日)するとともに、事態を関係当局に報告および指示を仰いだ(6月13日)上で、自主回収を決定した次第です。
続く6月14日には取引店様に回収手順をご説明、6月15日から全国の該当製品を納入した医療機関に製品回収のご案内を開始しました。6月19日の時点では9割以上の施設にご案内を終了しております。また、新たに出荷される製品には、米国産FCS使用の製品が混在することはございません。
当該製品は、厚生労働省の通知++により示された方法で実施したリスク評価で基準をクリアしておりますので、現在の科学水準からみて健康被害を生じるリスクは極めて低いものと考えております。
また、該当ロットに使用された米国産FCSは、欧州医薬品品質理事会(EDQM)+++の証明書により、欧州にて使用が許可されている原材料でございます。
しかしながら、このたびの事態は、当時の新規のガイドラインに対応するための書類作成、およびその確認作業の過程で発生したものでございます。
高品質の製品をもって社会に貢献することをめざしております弊社にとりまして、再調査を実施するまで事態を認識できなかったことは、痛恨の極みでございます。
対応にあたりましては、医療関係の皆様への十分な情報提供を基盤として、専門家のご意見とともに患者様に正確な情報をお伝えすることを第一に考え、対応を図ってまいります。
患者様には、多大なご迷惑をお掛けいたしましたことを深く反省し、衷心よりお詫び申し上げます。弊社といたしましては、このようなことが二度と起こらないようチェック体制の強化と高品質を求める企業体質をより強化していく所存でございます。
中外製薬株式会社
* ノイトロジン注:白血球減少症治療薬
** エポジン注:腎性貧血治療薬
*** 培養:生物学的製剤の製造過程において、産生細胞を培地の中で増やすこと
**** 培地:直接の原料ではなく、細胞を培養するときのいわば“畑”にあたるもので精製される工程で十分に除去される
+ 定められた猶予期間:米国産ウシ由来原料を使用した製品は生物由来原料基準一部改定に基づき経過措置期間内(2004年9月30日まで)に原産国の切替えを行う。
++ 厚生労働省の通知:薬食審査発第0801001号、2003年8月1日
+++ EDQM:(European Directorate for the Quality of Medicines:欧州医薬品品質理事会)欧州局方に準拠していることの証明書を発行している公的機関で、この証明書が欧州でのFCS使用の安全性を担保している
お問い合わせの例
Q: 今回の回収の対象となる製品はどのようなものですか?
A: 米国産ウシ由来原料を使用したノイトロジン®注およびエポジン®注で、2004年10月1日以降に出荷された一部の製品が対象となります。
Q: 今回の回収該当品を投与された際の健康被害はありますか?その安全性を教えてください。
A: 2004年10月1日から2006年6月12日までの期間では、ノイトロジン®注およびエポジン®注の投与例において、クロイツフェルト・ヤコブ病を発症したという報告はありません。また、エポジン®注(1990年)、ノイトロジン®注(1991年)発売以降、2004年9月30日までの期間においてもそのような報告はありませんでした。
Q: 健康被害の恐れがきわめて少ないのに、なぜ回収するのですか?
A: 米国産ウシ由来原料を使用した製品は、生物由来原料基準一部改正時の経過措置期間内(2004年9月30日まで)に原産国の切り替えが求められておりました。しかし、2004年10月1日以降に出荷されたノイトロジン®注およびエポジン®注の一部で、米国産ウシ胎仔血清(FCS)を使用して培養した有効成分が使われていたことが判明いたしましたので、該当製品を自主回収することにいたしました。
Q: FCSとは何ですか?また、何のために使用しているのですか?
A: FCSはウシ胎仔血清(fetal calf serum)のことです。有効成分を細胞から産生させるための培養液中に、栄養素(成長因子)を供給するために加えています。
Q: 培養液中に入れたFCSはそのまま製品に入るのですか?
A: 有効成分を産生させた培養液の精製工程でFCSや他の不純物は充分に除去されます。
Q: いつ不適切な出荷があるとわかったのですか?
A: 2006年6月5日に医療機関より、「ノイトロジン®注およびエポジン®注のウシ由来成分の生産国はいつ低リスク国産に切り替わったのか?」とのお問い合わせを受け、その調査過程において判明いたしました。
ノイトロジン®注は6月9日(金)に、エポジン®注は6月10日(土)に判明しました。
Q: どうしてこのようなことが起こったのですか?
A: 2003年12月に実施したウシ由来原料の調査において、ノイトロジンおよびエポジン有効成分の製造過程で使用されるFCSの原産国調査を行いました。その際に調査の過程で人為的ミスがあったこと、またそれを検証する体制が不十分であったことが原因で原産国を誤認してしまいました。
Q: これから投与される製品は安全ですか?
A: 医療機関に該当する製品を案内し回収中であること、およびこれから出荷される製品は、すべて低リスク国産FCSを培地に加えて製造した有効成分を製剤化した製品に切換えていることから安全です。
Q: 再発防止策を教えてください。
A: 現在のチェック体制を見直し、複数部門によるチェック体制をより強化してまいります。なお、すでに米国産FCSの購入は行っておりません。
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2006年9月 患者様へ
ノイトロジン®注、エポジン®注自主回収についてのお詫びとご報告
この度のノイトロジン®注及びエポジン®注の自主回収におきましては、患者様には多大なご迷惑とご心配をお掛けいたしましたことを深く反省し、衷心よりお詫び申し上げます。
本件につきましては、監督官庁である東京都に回収終了報告書を提出し、8月24日に受理いただきましたことをご報告申し上げます。
今回の自主回収は、2003年12月米国でのBSE発生に伴うウシ胎仔血清(FCS)の原産国調査において、一部の原薬について米国産FCS使用とすべきところを豪州産FCS使用と誤って記載し、国が定めた米国産FCSの使用可能な期限終了後も、その原薬を使用した製品を製造出荷していたことによるものです。
この事態に対し、医薬品医療機器総合機構及び厚生労働省による立入り調査を受け、生物由来原料の取り扱いに関する改善策を提出し受理いただいております。
具体的には、従来の品質保証体制に加え、本社品質保証部門と生産工場間にて生物由来原料に関する情報が正確に把握され、国が定めた規制に準拠した製造が行われていることを常に確認できる社内体制を整備することといたしました。
このような事態を招きましたことを真摯に受け止め、関係者に対し社内規程に則って、社長をはじめ関係役員および担当者合計10名に対し、減俸、降格等厳正な処分を行うことに決定致しました。今後は、上記の具体的改善策を着実に遂行し、再びこのような事態を生じさせないよう全社をあげて品質保証体制強化に取り組んでまいる所存でございます。
今回の回収対象製品は、厚生労働省の通知により示された方法で実施したリスク評価により、十分安全であるという結果が得られておりますので、健康被害を生じるリスクは極めて低いと考えております。しかしながら、万が一、今回の回収対象製品により患者様に健康被害が生じた場合には、弊社が誠意を持って適切に対応させていただきます。
この度の回収に際しまして、患者様方には多大なご迷惑とご心配をお掛けいたしましたことを重ねて深くお詫び申し上げます。
本件につきましてのお問い合わせは、下記までお願い申し上げます。