骨髄非破壊的同種移植 2008年

55歳以上の症例における骨髄非破壊的同種移植:非血縁者臍帯血移植はHLA一致血縁者がいない症例にとって安全でかつ有効である Biol Blood Marrow Transplant 14:282-289, 2008

 強度減弱前処置治療は合併症、死亡率が低く、高齢者における造血幹細胞移植を可能とした。臍帯血はHLA一致血縁ドナーや非血縁ドナーに代わる移植源として検討されてきた。今回、我々は高齢者に対する臍帯血を用いた強度減弱前処置移植が安全で有効であると仮定し、HLA一致血縁者間移植(n=47)とHLA一致あるいは一座不一致血縁ドナーが存在せず臍帯血移植(n=43)を行った55歳以上の症例における治療関連死と全死亡率を比較した。

強度減弱全処置治療法は全身放射線療法(2Gy)とフルダラビンおよびエンドキサン(n=69)、フルダラビンおよびブスルファン(n=16)、フルダラビンおよびクラドルビン(n=5)により施行された。年齢の中央値はHLA一致血縁者間移植と臍帯血移植でそれぞれ58歳(55~70歳)および59歳(55~69歳)であった。最も多い疾患は急性骨髄性白血病/骨髄異形成症候群(50%)であった。臍帯血移植を受けた症例では88%が2つの臍帯血、93%がHLA1座あるいは2座不一致臍帯血が使用された。経過観察期間の中央値は27ヶ月(12~61ヶ月)であった。

HLA一致血縁者間移植と臍帯血移植の3年進行停止生存率はそれぞれ30%ならびに34%(p=0.98)、全生存率は43%ならびに34%(p=0.57)で両者に有意差は認められなかった。急性移植片対宿主病II~IVはそれぞれ42%ならびに49%(p=0.20)、移植後第180病日の移植関連死亡は23%ならびに28%(p=0.36)と同等であった。

しかし臍帯血移植群では1年の慢性移植片対宿主病は40%とHLA一致血縁者移植(17%)と比べて有意に高率に発症した(p=0.02)。多変量解析では移植片の種類は移植関連死亡ならびに全生存率に影響はなく、hematopoietic stem cell transplantation comorbidity indexのみが独立した因子であった。臍帯血移植はHLA一致血縁者ドナーのいない高齢者の代替えの移植片となり得るものと考えられる。強度減弱前処置治療を用いた臍帯血移植は年齢およびHLA一致血縁者が存在しないために移植適応外とされていた高齢者について移植適応が広がる。高齢者に造血幹細胞移植を行う際には併存症の評価が重要である。

相本瑞樹(平成20年4月21日)

http://medwebsv.med.osaka-cu.ac.jp/labmed/

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