リツキサンの注意

リツキサンの注意

がん情報サービス リツキシマブと新規抗B細胞抗体
更新日:2006年10月01日 掲載日:2006年10月01日
http://ganjoho.ncc.go.jp/public/dia_tre/treatment/topics/rituximab.html
より抜粋

4.リツキシマブ投与を受ける患者さんに留意していただきたいこと
詳しく説明した中で、リツキシマブは有害反応が強い薬剤と思われたかもしれませんが、通常の抗がん剤より安全性の高い薬で、数時間の点滴によって多くの患者さんに外来投与が可能です。ただし、血液中に多数のリンパ腫細胞が出現している患者さんや体内のがん細胞量の多い患者さん、脾臓(ひぞう)が大きく腫れている患者さん、全身状態が良くない患者さん、心臓や肺に病気のある患者さん等では、特に初回投与の際に強い反応が起こり、ときに死亡に至ってしまうことがあります。そのため、血液中を含めて体内のがん細胞量が多い患者さんでは、抗がん剤治療を先行させて、がん細胞の量を減らした後にリツキシマブを開始するほうが安全な場合があります。また、多くの有害反応が初回投与時に発現しやすいため、初回投与のときだけは数日間入院していただき、2回目以降の投与は外来で行うことが勧められます。

5.費用のこと
リツキシマブは安全性と有効性の高い優れた薬剤ですが、高価な薬剤であることが問題点です。日本の健康保険制度では、8回までの投与が認められています。患者さんの体格によって使用量が異なりますが、375mg/m2の1回分の薬の価格は約30万円に達し、4回投与で約120万円、8回投与で約240万円という極めて高価な薬剤です。しかし、健康保険の適用対象の薬剤ですので、患者さんが加入している健康保険の種類により、リツキシマブだけの費用として、2割負担の場合は1回につき約6万円、3割負担の場合は1回につき約9万円を支払う必要があります。ただし、都道府県による高額療養費制度や加入している保険組合の償還制度などによって最終的な負担額は減ることが多いです。健康保険に加入していて特別な経済事情を抱えていない患者さんの場合は、大きな問題がなく使用できています。

6.B細胞リンパ腫に対するアイソトープ標識抗体
悪性リンパ腫のがん細胞は、元来放射線療法が効きやすいことがわかっています。そこで最近になって、放射線を発するアイソトープと抗体を結合させた薬も開発されています。このようにすると、アイソトープの発する放射線で、隣接したがん細胞への効果も期待できます。また、血管が十分に形成されていないなどの理由で抗体医薬が到達しにくい腫瘤性病変(がんのかたまりを形成している病変のことです)に対しても、効果が期待できます。・・・中略・・・・・ こういった薬剤の場合、アイソトープを国外から輸入し、投与する医療機関で抗体に結合するという特別な操作を要するため、簡単に使用することはできません。また、すでに承認された欧米諸国では、高価なリツキシマブのさらに数倍という、極めて高価な薬剤であることにも留意する必要があります。

わが国でも保険承認に向けた準備が進められていますが、専用の設備が必要なため、専門施設で治療を受ける必要があります。

7.アイソトープ標識抗CD20抗体の投与を受ける場合の留意点
これまで、上記のようなアイソトープ標識抗体であるベクサーやゼバリンの有効性が確認されているのは、濾胞(ろほう)性リンパ腫を中心とする低悪性度B細胞リンパ腫の患者さんです。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫などの中悪性度B細胞リンパ腫や、中悪性度への組織学的進展を示した低悪性度B細胞リンパ腫では、アイソトープ標識抗体の効果は限定されたものです。投与後6~7週後に血小板数や白血球数が最低値を示すという、通常の抗がん剤より長く骨髄抑制(抗がん剤投与や放射線治療によって骨髄機能が低下し、赤血球、白血球、血小板が減少した状態のこと)が続きます。中悪性度B細胞リンパ腫のように増殖の速いがんでは、アイソトープ標識抗体が期待されたほど奏効しないのに骨髄抑制が持続する可能性があります。このために、他の抗がん剤治療を行うことができないといったデメリットがありますので、本治療を受けるべきかは担当医とよく相談してください。

ベクサー、ゼバリンといったアイソトープ標識抗CD20抗体の場合も、がん細胞にCD20が発現していることが投与の必要条件であり、CD20が陰性になっている場合は効果が期待できません。

131I標識抗CD20抗体(ベクサー)と90Y標識抗CD20抗体(ゼバリン)

B細胞リンパ腫に対する放射性免疫療法として検討されてきた放射性同位元素(アイソトープ)の中で、最も精力的に検討されてきたのはヨード-131(131I)とイットリウム-90(90Y)です。131Iはβ線とγ線を、90Yはβ線のみを放出しますが、β線は90Yのほうが強力です。

90Yがチウキセタンという結合物質を介し、マウス型抗CD20抗体イブリツモマブに結合しているのがゼバリンで、131Iを結合させた抗CD20抗体がベクサーです。ゼバリンについてのみ述べると、治療後にがん病変や正常臓器への分布を評価するための画像判定には、γ線が必要です。これを放出するインジウム-111(111In)を結合した111In-ゼバリンを、最初に投与します。その後、治療薬として90Yを結合した90Y-ゼバリンを使用します。

第1日目のリツキシマブ投与後に111In-ゼバリンを投与し、第8日目のリツキシマブ投与後に0.4mCi/kgの90Y-ゼバリンを投与します。治療対象は、骨髄中のリンパ腫細胞25%未満、血小板数15万/µl以上の患者さんに限定されます。血小板数10~15万/µlの場合は、治療抗体としての90Y-ゼバリンの投与量を3/4量(0.3mCi/kg)に減量します。

ベクサー、ゼバリンの両剤とも、抗がん剤治療後の再発患者さんや、リツキシマブにより十分な効果が得られなかった低悪性度B細胞リンパ腫の患者さんに60~80%の高い奏効割合が確認されています。ゼバリンは、リツキシマブとの比較試験でリツキシマブを上回る効果が認められました12)。

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