ザイロリック

ザイロリック (アロプリノール)

尿酸生成抑制薬である。すなわち、がん細胞が壊れると核酸からヒポキサンチンが生じ、これがキサンチン酸化酵素により尿酸へ代謝され尿中へ排泄される。尿酸は酸性では溶けにくく、アルカリ性でよく溶ける。このアルカリでの溶解度は尿酸よりヒポキサンチンでより高い。

そこで過剰に壊れた核酸代謝産物をうまく尿中へ排泄させるには、ヒポキサンチン酸化酵素をアロプリノールで阻害して尿酸の産生を抑え、また、過剰に産生されたヒポキサンチンや尿酸をアルカリ状態において溶解度を高め、それらの析出・沈着による腎への傷害を抑えることが肝要になる。

アロプリノールの保険適応は一般には痛風、ならびに高尿酸血症を伴う高血圧症であるが、小児がんを含む悪性腫瘍の治療では急速な悪性腫瘍細胞(白血病細胞など)が治療により急速に崩壊することにより生じる腫瘍崩壊症候群 tumor lysis syndromeを予防するための予防治療薬として必須のものである。錠剤で50mg錠と100mg錠がある。成人では一日200-300mgを2ないし3回に分服する。

腫瘍崩壊症候群では腫瘍量の急激な減少に伴い、高カリウム血症、低カルシウム血症、高尿酸血症、高Al-P血症等があらわれ、急性腎不全を呈する。重篤な場合、死亡例や透析が必要となった例も報告されている。血液中に大量の腫瘍細胞がある場合(例えば小児の急性リンパ性白血病では初診時の白血球数が5万/μl以上)、臓器浸潤のある例、最初から腎機能の低下がある、あるいは血清中尿酸やリン(P)値が高いといった例では初回治療開始は十分注意した上で、治療に入る必要がある。

腫瘍崩壊症候群は治療開始後12~24時間以内に高頻度に認められるので、このような例では治療直後から翌日まで尿量、尿pH, 血清中LDH, 電解質(Na, K, Cl, P, Ca)濃度及び腎機能検査(血清中クレアチニン、BUN、尿酸値など)、心電図などをチェックし、患者の一般状態を十分観察しながら治療を進める必要がある。

腫瘍崩壊症候群の発症は腫瘍細胞の薬剤に対する感受性に依存するので、治療内容が非常に強力な多併用化学療法でなくても急性リンパ性白血病ではステロイド剤単独の治療でも生じたとする報告があり、また、最近では悪性リンパ腫にリツキサンを投与した際にも生じたとする報告がある。

上記の発症機序から考え、腫瘍崩壊症候群の予防には十分な水分補給、尿のアルカリ化とアロプリノール(ザイロリック、アロシトール)投与が必要である。われわれが用いている方法は治療開始12時間まえから開始する。

(1)ソリタT3 500mlを3,000ml/m2/dayで持続点滴する。

(2)メイロン(炭酸水素ナトリウム)を0.1-0.2ml/kg/hrで持続点滴する。

(3)ダイアモックス 125mg(6歳未満)、250mg(6歳以上)を1日2回内服あるいは靜注で投与する。

アロプリノールは300mg/m2/dayを分3で内服させる。このような手段により、尿中尿酸濃度を下げ、尿のpHを7.0-7.5に保つ(通常では尿のpHは6.5以下)。なお、ダイアモックス(アセタゾラミド)は利尿薬の一つであるが、炭酸脱水酵素抑制薬で尿をアルカリ化させる作用がある。

最近、新たにRasburicaseという薬剤が出ている。わが国では未承認である。このラスブリカーゼはアロプリノールのそれとは作用機序が異なり、遺伝子組み換え尿酸酸化酵素(urate oxidase)である。すなわち、尿酸を分解する薬剤である。新薬であるため高価でこれまで使われてきたアロプリノール治療に比べると9,000倍も医療費がかかることが欠点とされている。

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