■ 濾胞性リンパ腫の治療選択肢は増えた
堀田 まだ経験例がそんなに蓄積されていませんが,期待できる領域ということで,たいへん注目を集めています。日本でもパイロット的なスタディが少しずつ出てきております。これがスタンダードの治療になっていくのかどうか,その見通しはどうでしょう。
飛内 われわれの施設でも移植グループがミニ移植の臨床試験を行っていますが,原則として兄弟にHLAの適合したドナーがいる場合に限定されています。年齢は60歳代ぐらいまでに対象を広げられるかもしれませんが,同胞ドナーの存在が前提条件となり,どうしてもある一定の患者に限定された治療になりますから,比較試験を組むのは難しいでしょう。
しかし,進行期濾胞性リンパ腫はこれまであらゆる治療手段をもってしても治癒せず,再発・再燃を繰り返す疾患でしたが,ミニ移植の導入は,患者にとっては有力な選択肢が増えたことになります。この治療法を期待されて国立がんセンター中央病院を受診される患者さんも最近多くなってきました。
標準的な治療になるかどうかはまだわからないとしても,モノクローナル抗体も有力な1つの治療手段だし,ミニ移植もあるし,あるいはフルダラビンやクラドリビンといったプリン誘導体もあります。インターフェロンも日本で臨床試験が開始されました。濾胞性リンパ腫患者にとっては,いろいろな治療選択肢が出てきたということです。
岡本 骨髄バンクのドナーを使うには倫理的に問題があると思いますが,将来的にはおそらく骨髄を用いても問題なく生着が得られるようになると思います。MD.Andersonのデータがそうです。
low grade lymphomaの自家移植にはいいデータがありませんが,そのなかでDana Farberのデータは興味深いです。彼らは診断前にminimal tumor stateにしておいて,骨髄から腫瘍細胞をパージングして移植しています。全体の成績を見ると8年生存率が67パーセントで,決して悪くないんです。さらにおもしろいデータは,PCRが陰性になる症例では非常に生存率がよいことです。
自家移植にPBSCTを使えば安全性は高まりますし,抗CD20抗体をその前後に用いることによって,成績向上を期待できると思います。抗CD20抗体は骨髄抑制が全くない薬ですから夢は広がりますが,有効性を確かめる臨床試験は難しいと思います。
飛内 濾胞性リンパ腫に対する自家移植はわれわれの施設でいまもやっています。最近はCD34 positive selectionのスタディの対象にしています。濾胞性リンパ腫は治療の選択肢がずいぶん増えてきたといえます。
堀田 この数年でものすごい進歩ですね。いままでは何をやってもむだな感じで,何もしなくてもいいのではないかというところから,advancedになる前から積極的に治療をする,しかも治療法が選択できるという点で,非常にホットな領域ですね。
岡本 治療する側は早くエビデンスをつくらないと,選択がたいへんです。
飛内 私たちのところでは,患者にその時点で施行中のスタディの話をしていますが,有効な新治療法が出そろってくれば,患者さんが選択できる時代になるかもしれません。
堀田 日本では欧米と比べると,濾胞性リンパ腫がだんだん増えてきたとはいえ,多いタイプのものではないので,いろいろ切り分けてやっていると,大きなスタディとしにくいですね。そこが日本の現状かと思います。
飛内 indolent B-lymphomaの初回治療としてIDEC-C2B8とCHOPを併用したrandomized第二相試験を70例弱を目標にして施行していますが,1999年9月に症例登録を開始して1年以内に症例登録が終わりそうな状況です。日本でも臨床試験の対象となる濾胞性リンパ腫患者は少なくないと思います。
堀田 新しく発生というのではなくて,いままで治療せずに見ていたという例が一気に入ってきますからね。
飛内 患者の中にはモノクローナル抗体のスタディが始まるまで待っていた人もいました。待てる病気ですから。
堀田 興味があれば,集まってくるということですから,スタディの魅力はかなり大きいということです。
飛内 医者も魅力を感じて患者を紹介するようです。