読売新聞記事「悪性リンパ腫の新薬」

悪性リンパ腫の新薬 再発治療 選択肢広がる

 年間9000人以上の命を奪う血液がんの一種、悪性リンパ腫は、比較的治りやすいものから治療が難しいものまで、20以上もの種類があるのが特徴だ。治療法もそれぞれ異なる。なかでも最も治りにくいとされる種類に対する新薬が、相次いで登場。効果に期待が集まっている。(坂上博)

 悪性リンパ腫は、白血球の中のリンパ球の一部ががん化する病気だ。首やわきの下、足の付け根などのリンパ節にしこりができることが多い。胃や肺などにできることもある。高齢化とともに患者は増えている。

 悪性リンパ腫は、ホジキンリンパ腫(患者の約5%)と、非ホジキンリンパ腫(同約95%)の二つに大きく分かれる。このうちホジキンリンパ腫は、比較的抗がん剤が効きやすい。

 一方、非ホジキンリンパ腫は、進行のゆっくりした「低悪性度」から、月単位で進む「中悪性度」、週単位で急速に悪化する「高悪性度」と、病気の進み具合は様々だ。

 ただし、「高悪性度」の悪性リンパ腫は、進行も速いが薬もよく効き、治りやすい。

 実は、やっかいなのは「低悪性度」の悪性リンパ腫だ。進行は遅いのだが、薬があまり効かない。名古屋市の名古屋第二赤十字病院血液・腫瘍(しゅよう)内科部長の小椋美知則(みちのり)さんは「再発を繰り返し、治療が手詰まりとなることも多い」と話す。

 新薬の対象となるのは、「低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫」と、「マントル細胞リンパ腫」(低悪性度と中悪性度の中間)。両者で非ホジキンリンパ腫の約4割を占める、治りにくい悪性リンパ腫の代表だ。

 新薬の一つは、昨年承認された飲み薬、フルダラ錠(一般名リン酸フルダラビン)。従来の抗がん剤のような、脱毛やしびれの副作用はないが、白血球減少などには気をつける必要がある。

 もう一つは、今年に承認された注射薬のゼヴァリン(一般名イブリツモマブチウキセタン)。薬にイットリウム90という放射性物質を結合させ、放射線を発し、がん細胞を殺す。

 80歳代のA子さんは6年前、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫と診断され、抗がん剤治療を受けてきたが、今年3度目の再発を起こした。同病院で、ゼヴァリンの注射を受けたところ、1か月後には、検査でもがんが見つからなくなった。

 ゼヴァリンの治療ができるのは、放射線の管理ができる約60施設に限られる。体内の放射線はすぐに外出しても問題ないレベルに下がる。

 いずれも、従来の抗がん剤が効かなくなったり再発したりした患者が対象だ。

 小椋さんは「これらの悪性リンパ腫は、新薬でも完全に治すことは困難だが、再発までの期間を延ばすことが期待でき、従来の薬が効かなくなった患者にとって新たな選択肢が増えた意義は大きい。副作用が比較的少ないため、高齢患者に使いやすいのも利点だ」と話している。

(2008年12月26日 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/saisin/20081226-OYT8T00443.htm

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