フルダラビン
フルダラビンはクラドリビンと似た化学構造を持つ薬剤で、クラドリビン同様、がん細胞の遺伝子合成を阻害することで効果を発揮する抗がん剤です。慢性リンパ性白血病に対して高い効果が認められていて、わが国では「貧血または血小板減少を伴う慢性リンパ性白血病」に対して適応承認が得られています。
慢性リンパ性白血病は、低悪性度非ホジキンリンパ腫と似通った点のある病気と考えられ、欧米では低悪性度非ホジキンリンパ腫に対してもフルダラビンが検討されてきました。その結果、再発・再燃例の低悪性度非ホジキンリンパ腫に対しても単剤で50%台の奏効割合が認められました。
初回治療の場合でも、濾胞性非ホジキンリンパ腫に対して60%以上の高い奏効割合が報告されています。しかし、未治療の低悪性度非ホジキンリンパ腫を対象としたフルダラビンとCVP(シクロホスファミド/ビンクリスチン/プレドニゾロン)療法との比較試験では、奏効割合こそCVP療法の59%に対して76%とフルダラビンが勝っていたものの、増悪までの期間と生存期間は両者の間で差が認められなかったという報告があります10)。
単剤での効果が、従来の抗がん剤をしのぐものかどうかは不明です。 単剤でも期待できる高い抗がん効果から、海外では他の抗がん剤と組み合わせた併用療法の研究も進んでいます。ミトキサントロン、デキサメタゾン、シクロホスファミド、リツキシマブ等との併用で、未治療例のみならず、再発・難治例に対しても80~90%もの奏効割合が報告されています。
わが国では保険適用がないために、注射薬であるフルダラビンの悪性リンパ腫に対する検討は行われてきませんでした。
しかし、イギリスで開発された内服薬のフルダラビンの開発治験が悪性リンパ腫に対して行われ、完了しています。内服薬にもかかわらず注射薬と同等の血中濃度が得られ、濾胞性非ホジキンリンパ腫を中心とした再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫に対して65%と、欧米の報告と同等の高い奏効割合が確認されています11)。
その簡便性から、頻回に通院する必要がなくなり、高いQOLが維持されることも期待されています。しかし、内服薬だからといって決して副作用が軽い訳ではありません。白血球の減少が注射薬と同程度に高い頻度で認められます。帯状疱疹(たいじょうほうしん)などの免疫能の低下からくる感染症も起こりうるため、使用に関しては十分な注意が必要になるでしょう。
低悪性度非ホジキンリンパ腫は経過の長い疾患です。これらの薬剤の高い効果が一時的なものであるのか、それとも長期的な予後の改善をもたらすのかは、現時点ではまだ不明です。しかしフルダラビンは、欧米において低悪性度非ホジキンリンパ腫に対する薬剤の中でも重要な位置を確立しています。わが国においても治療の選択肢が広がることが期待されます。
がん情報サービスより 2006年10月1日
http://ganjoho.ncc.go.jp/public/cancer/data/ML_new_therapy.html