リツキシマブ(商品名:リツキサン)

最近の参考書でも、リツキサンは、生存率が向上するかどうか不明と書いてあるものが多いのですが、このがん情報センターの記事では、2006年ですでに、その有効性を確認しています。 維持療法として有効。

以下引用記事



リツキシマブ(商品名:リツキサン) 

  リツキシマブは、白血球の一種であるBリンパ球の表面に発現しているCD20抗原というタンパクに結合する抗体として、遺伝子組換え技術によりつくられた薬剤です。CD20抗原はB細胞性の悪性リンパ腫の大多数に存在しており、B細胞性リンパ腫に対する優れた標的です。リツキシマブはこの抗原に結合する(抗原-抗体反応)ことで、直接がん細胞を攻撃したり、生来体内に備わっている他の免疫能を介してがん細胞を死滅させます。マウスで開発された抗体成分の大部分を人間の成分に置き換えた合成薬なので、長く体内に残り、長期にわたって効果が期待できるという特徴があります。

1998年に、アメリカで行われた再発・再燃例の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫に対する開発治験では、48%という高い奏効割合(がんのサイズが半分以下に縮小する割合)が報告されました。わが国でも、患者さんに対する同様の開発治験で61%という奏効割合が確認され1)、2001年9月に保険適用が承認されました。

2003年9月より、「CD20抗原陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫」に対して適応承認が得られています。 このようにリツキシマブは、B細胞性非ホジキンリンパ腫に対して単剤でも高い効果が期待できますが、他の抗がん剤と併用しても副作用が増強されないこと、併用した抗がん剤のリンパ腫細胞に対する薬剤感受性を高めることが知られています。併用療法で用いることで、さらなる効果が期待されます。

このことは、海外で行われた大規模な比較試験によって証明されています。

イギリスで行われた、未治療の進行期低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫を対象とした「CVP療法(シクロホスファミド/ビンクリスチン/プレドニゾロンの併用化学療法)」と「リツキシマブを併用したCVP療法」の比較試験において、奏効割合がCVP療法の57%に対してリツキシマブを併用したCVP療法では81%と、統計学的に明らかな差が認められました。

また、30ヵ月の観察期間において、無増悪生存期間(悪性リンパ腫の再発・増悪をみないで生存する期間)がCVP療法15ヵ月に対して併用したほうが32ヵ月と、明らかな延長も認められています3)。

従来の化学療法に加えてリツキシマブを併用することの利益は明らかであり、非ホジキンリンパ腫の病型にかかわらずリンパ腫の細胞がCD20抗原陽性であるならば、リツキシマブを併用した化学療法が現在の標準治療と考えられています。

リツキシマブは、初回治療に組み込む以外の使い方でも有用性が示唆されています。低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫の代表である、濾胞性(ろほうせい)リンパ腫の未治療または再発・難治の患者さんを対象に、リツキシマブによって寛解導入治療を行った後に経過観察するグループと、さらにリツキシマブによる維持療法を追加して行うグループについて再発・増悪などが起こるまでの期間を比較しました。リツキシマブを追加しなかったグループは12ヵ月であったのに対し、維持療法として追加したグループでは32ヵ月であったと報告されています5)。

そのほかにも、濾胞性B細胞性非ホジキンリンパ腫に対してリツキシマブを用いた維持療法を行うことで、寛解持続期間が延長するという報告がいくつかあります。

維持療法が有益であるものとそうでない病型があることには、注意が必要です。現在、リツキシマブによる維持療法が有用な病型は、濾胞性B細胞性非ホジキンリンパ腫であるとされています。

従来の抗がん剤治療では、がん細胞が減ったようにみえても感度の鋭い遺伝子レベルの検査を用いて調べてみると、微量のがん細胞が検出されるのが常でした。しかし、抗原抗体反応によってがん細胞を攻撃するリツキシマブは、そのような微量の細胞も残さない程度までがん細胞を殺してしまうことも期待できます。

自己造血幹細胞移植を併用した大量化学療法において、リンパ腫細胞の骨髄への浸潤(しんじゅん)が高頻度にみられる濾胞性非ホジキンリンパ腫やマントル細胞リンパ腫では、採取する細胞の中へリンパ腫細胞が混入してしまうことが、しばしば問題になります。そこで、リツキシマブの抗がん効果を期待して、自己造血幹細胞を採取する前に行う化学療法の直後にリツキシマブを併用し、血中にわずかでもがん細胞が残らないようにしてから採取する方法が考案され、臨床応用されています。実際に、この方法を用いた場合には、採取した細胞の中に入り込むがん細胞がなくなることが遺伝子レベルの検査で確認されていて7)、自己造血幹細胞移植後の再発を減らすのに役立つことが期待されています。


がん情報サービスより    2006年10月1日


http://ganjoho.ncc.go.jp/public/cancer/data/ML_new_therapy.html

 

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