ノイトロジン 自主回収

患者様へ

ノイトロジン®注およびエポジン®注の回収のお知らせ

このたび弊社では、下記の理由でノイトロジン®注*およびエポジン®注**の一部製品を自主回収することにいたしました。

患者様には大変ご迷惑をお掛けし誠に申し訳ございません。深くお詫び申し上げます。以下状況をご説明申し上げます。

ノイトロジン®注およびエポジン®注の製造過程の細胞培養***の段階において、ウシ胎仔血清(FCS)を培地****に栄養素として少量添加しております。2004年7月5日制定・施行の生物由来原料基準の改正にともないFCSの原産国の切り替えが求められ、弊社ではこれに準拠するために(1)培養段階では、非米国産FCS(豪州産FCS)のみを使用することとし、それとともに(2)既に製造されていた有効成分(原薬)については、米国産FCSを用いた原薬を確認し該当の原薬を破棄したと認識しておりました。

しかしながら、本年2006年6月5日の医療機関からの問い合わせをきっかけに再調査を行った結果、原産国の切り替えが求められる以前に製造された原薬のうち、当初の調査結果(2003年12月)で「豪州産FCS使用」とされていた原薬の一部で米国産FCSを使用していたことが判明いたしました[確認日:ノイトロジン®注 6月9日、エポジン®注 6月10日]。この誤った調査結果が原因となり、当該米国産FCS使用の原薬を用いた製品の一部が上記基準の猶予期間+を超えて混在し、出荷されておりました。弊社では、該当する製品をただちに出荷停止(6月12日)するとともに、事態を関係当局に報告および指示を仰いだ(6月13日)上で、自主回収を決定した次第です。

続く6月14日には取引店様に回収手順をご説明、6月15日から全国の該当製品を納入した医療機関に製品回収のご案内を開始しました。6月19日の時点では9割以上の施設にご案内を終了しております。また、新たに出荷される製品には、米国産FCS使用の製品が混在することはございません。

当該製品は、厚生労働省の通知++により示された方法で実施したリスク評価で基準をクリアしておりますので、現在の科学水準からみて健康被害を生じるリスクは極めて低いものと考えております。
また、該当ロットに使用された米国産FCSは、欧州医薬品品質理事会(EDQM)+++の証明書により、欧州にて使用が許可されている原材料でございます。

しかしながら、このたびの事態は、当時の新規のガイドラインに対応するための書類作成、およびその確認作業の過程で発生したものでございます。
高品質の製品をもって社会に貢献することをめざしております弊社にとりまして、再調査を実施するまで事態を認識できなかったことは、痛恨の極みでございます。

対応にあたりましては、医療関係の皆様への十分な情報提供を基盤として、専門家のご意見とともに患者様に正確な情報をお伝えすることを第一に考え、対応を図ってまいります。

患者様には、多大なご迷惑をお掛けいたしましたことを深く反省し、衷心よりお詫び申し上げます。弊社といたしましては、このようなことが二度と起こらないようチェック体制の強化と高品質を求める企業体質をより強化していく所存でございます。

中外製薬株式会社

* ノイトロジン注:白血球減少症治療薬
** エポジン注:腎性貧血治療薬
*** 培養:生物学的製剤の製造過程において、産生細胞を培地の中で増やすこと
**** 培地:直接の原料ではなく、細胞を培養するときのいわば“畑”にあたるもので精製される工程で十分に除去される
+ 定められた猶予期間:米国産ウシ由来原料を使用した製品は生物由来原料基準一部改定に基づき経過措置期間内(2004年9月30日まで)に原産国の切替えを行う。
++ 厚生労働省の通知:薬食審査発第0801001号、2003年8月1日
+++ EDQM:(European Directorate for the Quality of Medicines:欧州医薬品品質理事会)欧州局方に準拠していることの証明書を発行している公的機関で、この証明書が欧州でのFCS使用の安全性を担保している

お問い合わせの例
Q: 今回の回収の対象となる製品はどのようなものですか?
A: 米国産ウシ由来原料を使用したノイトロジン®注およびエポジン®注で、2004年10月1日以降に出荷された一部の製品が対象となります。

Q: 今回の回収該当品を投与された際の健康被害はありますか?その安全性を教えてください。
A: 2004年10月1日から2006年6月12日までの期間では、ノイトロジン®注およびエポジン®注の投与例において、クロイツフェルト・ヤコブ病を発症したという報告はありません。また、エポジン®注(1990年)、ノイトロジン®注(1991年)発売以降、2004年9月30日までの期間においてもそのような報告はありませんでした。

Q: 健康被害の恐れがきわめて少ないのに、なぜ回収するのですか?
A: 米国産ウシ由来原料を使用した製品は、生物由来原料基準一部改正時の経過措置期間内(2004年9月30日まで)に原産国の切り替えが求められておりました。しかし、2004年10月1日以降に出荷されたノイトロジン®注およびエポジン®注の一部で、米国産ウシ胎仔血清(FCS)を使用して培養した有効成分が使われていたことが判明いたしましたので、該当製品を自主回収することにいたしました。

Q: FCSとは何ですか?また、何のために使用しているのですか?
A: FCSはウシ胎仔血清(fetal calf serum)のことです。有効成分を細胞から産生させるための培養液中に、栄養素(成長因子)を供給するために加えています。
Q: 培養液中に入れたFCSはそのまま製品に入るのですか?
A: 有効成分を産生させた培養液の精製工程でFCSや他の不純物は充分に除去されます。

Q: いつ不適切な出荷があるとわかったのですか?
A: 2006年6月5日に医療機関より、「ノイトロジン®注およびエポジン®注のウシ由来成分の生産国はいつ低リスク国産に切り替わったのか?」とのお問い合わせを受け、その調査過程において判明いたしました。
ノイトロジン®注は6月9日(金)に、エポジン®注は6月10日(土)に判明しました。

Q: どうしてこのようなことが起こったのですか?
A: 2003年12月に実施したウシ由来原料の調査において、ノイトロジンおよびエポジン有効成分の製造過程で使用されるFCSの原産国調査を行いました。その際に調査の過程で人為的ミスがあったこと、またそれを検証する体制が不十分であったことが原因で原産国を誤認してしまいました。
Q: これから投与される製品は安全ですか?
A: 医療機関に該当する製品を案内し回収中であること、およびこれから出荷される製品は、すべて低リスク国産FCSを培地に加えて製造した有効成分を製剤化した製品に切換えていることから安全です。

Q: 再発防止策を教えてください。
A: 現在のチェック体制を見直し、複数部門によるチェック体制をより強化してまいります。なお、すでに米国産FCSの購入は行っておりません。

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2006年9月 患者様へ

ノイトロジン®注、エポジン®注自主回収についてのお詫びとご報告

この度のノイトロジン®注及びエポジン®注の自主回収におきましては、患者様には多大なご迷惑とご心配をお掛けいたしましたことを深く反省し、衷心よりお詫び申し上げます。
本件につきましては、監督官庁である東京都に回収終了報告書を提出し、8月24日に受理いただきましたことをご報告申し上げます。

今回の自主回収は、2003年12月米国でのBSE発生に伴うウシ胎仔血清(FCS)の原産国調査において、一部の原薬について米国産FCS使用とすべきところを豪州産FCS使用と誤って記載し、国が定めた米国産FCSの使用可能な期限終了後も、その原薬を使用した製品を製造出荷していたことによるものです。

この事態に対し、医薬品医療機器総合機構及び厚生労働省による立入り調査を受け、生物由来原料の取り扱いに関する改善策を提出し受理いただいております。
具体的には、従来の品質保証体制に加え、本社品質保証部門と生産工場間にて生物由来原料に関する情報が正確に把握され、国が定めた規制に準拠した製造が行われていることを常に確認できる社内体制を整備することといたしました。

このような事態を招きましたことを真摯に受け止め、関係者に対し社内規程に則って、社長をはじめ関係役員および担当者合計10名に対し、減俸、降格等厳正な処分を行うことに決定致しました。今後は、上記の具体的改善策を着実に遂行し、再びこのような事態を生じさせないよう全社をあげて品質保証体制強化に取り組んでまいる所存でございます。

今回の回収対象製品は、厚生労働省の通知により示された方法で実施したリスク評価により、十分安全であるという結果が得られておりますので、健康被害を生じるリスクは極めて低いと考えております。しかしながら、万が一、今回の回収対象製品により患者様に健康被害が生じた場合には、弊社が誠意を持って適切に対応させていただきます。

この度の回収に際しまして、患者様方には多大なご迷惑とご心配をお掛けいたしましたことを重ねて深くお詫び申し上げます。
本件につきましてのお問い合わせは、下記までお願い申し上げます。

ノイトロジン注

ノイトロジン注
商品名 ノイトロジン注 メーカー 中外

処方目的・適応

(1)造血幹細胞の末梢血中への動員/(2)造血幹細胞移植時の好中球数の増加促進/(3)がん化学療法による好中球減少症/(4)骨髄異形成症候群に伴う好中球減少症/(5)再生不良性貧血に伴う好中球減少症/(6)先天性・特発性好中球減少症/(7)HIV感染症の治療に支障を来す好中球減少症/(8)免疫抑制療法(腎移植)に伴う好中球減少症

使用上の注意 – ノイトロジン注
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一般的注意
(1)使用してはいけない場合……本剤の成分または他の顆粒球コロニー形成刺激因子製剤に対するアレルギー/骨髄中の芽球が十分減少していない骨髄性白血病,および末梢血液中に骨髄芽球が認められる骨髄性白血病
(2)慎重に使用すべき場合……薬物過敏症の前歴/アレルギー素因のある人/肝・腎・心肺機能の高度な障害
(3)その他…… 
・〈妊婦→回避〉〈小児→未確立〉
・(3)定期検査……使用中は定期的に血液検査を受ける必要があります。の一般的注意を参照

副作用の注意
重大な副作用
(1)ショックがおこることがあります。
(2)間質性肺炎がおこることがあります。
(3)急性骨髄性白血病・骨髄異形成症候群の人で,芽球の増加を促進することがあります。
(4)急性呼吸窮迫症候群がおこることがあります。
(5)造血幹細胞の末梢血中への動員を目的としてドナーおよび患者に本剤を使用する場合に,脾破裂が発現する可能性があります。

その他副作用
(1)おこることがある副作用……好中球浸潤・有痛性紅斑・発熱を伴う皮膚障害(Sweet症候群など),皮疹・発疹,かゆみ,じん麻疹/吐きけ・嘔吐,食欲不振,下痢,腹痛/骨痛,腰痛,腰背部痛,胸部痛/呼吸困難/動悸,むくみ,発熱,頭痛,倦怠感
(2)検査などでわかる副作用……血小板減少/AST・ALT・AL-P・LDH・ビリルビン上昇/肺水腫,低酸素血症,胸水/CRP上昇,尿酸上昇

三度目の注射

三度目の注射に行って来ました。 ノイトロジンという薬品名だということを知りました。 注射だけで4,000円近くもする結構高いお薬です。

もう白血球も少なくとも1,000は超えているでしょう。
病院から駅までバスに乗らないで、ぶらぶら歩いて帰りました。

このところ気分も安定していて元気です。
退院して明日で2週間になり、家での生活に慣れたこと。
それと多分、抗癌剤が抜けてきたからだと思います。
抗癌剤が抜けて普通になったところで、また次が始まる。
厄介なことですねぇ。

白血球減少時の注意点

白血球減少時の注意点

白血球は、外部からの有害物(悪い微生物など)の侵入から身を守る役目を行なっています。化学療法剤は、がん細胞と同時に健康な、感染と闘ってくれる白血球も壊してしまうので、感染への抵抗力が低下してしまいます。成人における正常な範囲の白血球の値は、2000~8000/ul といわれています。

白血球は治療後2・3 日から減り始め、7~14 日で最も低くなります。白血球が減少すると、他の人より感染が起こりやすくなります。(口内炎・気管支炎・下痢・化膿・発熱など)しやすくなります。治療中は2000 以上あれば感染の危険はほとんどないといわれていますが、 白血球数だけではなく全身の健康状態も関与しますので、 医師や看護師から注意するようにいわれる数値は多少異なります。

白血球低下時に家で気をつけること

白血球2000 以下の時
・食事前後、排泄の後、外出の前後などに手洗いを行ない、マスクを使用する。
・外出を控え、人ごみを避けます。仕事を続けている人は勤務時間をずらしたりします。
・入浴時間を短くしたり、体を拭くかシャワー浴にして、体力を消耗しないようにします。お風呂場は寒くないように気をつけます。
・感染を予防するために毎食後の歯磨きを習慣化する。この時期は、同時に口腔内を傷つけないように、柔らかい歯ブラシで、やさしく歯磨きをする。

白血球1000 以下の時
・うがいを起床時・毎食前後・寝る前に行う。
・できるだけ火の通った煮物で消化の良いものを食べます。口腔内に傷を作らないよう、熱いものや魚の小骨に注意する。料理をするときは、めんどうでも手袋をつけて家事をします。
・白血球を増やすお薬を注射することもあります。(熱があれば抗生剤を投与が必要になることもあります)

化学療法を受けている間は、感染しやすくなります。これは、抗がん剤が骨髄に作用して、白血球を減少させ、抵抗力が弱ってしまうからです。白血球は、 感染と戦うとても大切な血液成分なのです。 感染は口の中、 皮膚、 肺、直腸、泌尿生殖器などいろいろな場所におきやすくなります。患者様の状態を把握するために、主治医は頻繁に白血球の数を調べます。白血球数が非常に少なくなると、治療するための抵抗力をつけるために、薬の量を少なくしたりします。数が正常範囲以下になった状態を、好中球減少症といいます。

白血球数を極度に減少させることが多い抗がん剤を服用している場合、 医師は白血球が急速に回復するのを促進するコロニー刺激因子の注射を処方することがあります。G-CSF製剤(顆粒球コロニー刺激因子:グラン、ノイトロジン)やM-CSF製剤(ロイコプロール)は、ほとんどの種類の化学療法で一般的に使用されています。 (Mari lyn,J.D. ,1998/大西和子,1998) 以下にあげたことが感染を防いだり、早期発見に役立つでしょう。

1)白血球が少ないと言われた場合の留意点
(1) 手洗いを十分に行いましょう。特にトイレの前後や食事の前など。まず石鹸とぬるま湯で洗ってください。よく泡立てて、こすりあわせてください。手と手を重ねて前後によくこするときれいに洗えます。爪床や指の間もきれいに洗います。
(2) 出来るだけ人ごみは避けて外出しましょう。
(3) 外出から帰ったらうがいをしましょう。
(4) 排便後は、肛門周囲を清潔にしましょう。
(5) 直腸体温計や直腸座薬の使用は、肛門部位に小さな裂傷を作り血流中に感染物質が入り込むおそれがあるため、避けましょう。
(6) 性交の際には、膣に小さな傷ができるのを避けるため、やさしくまた十分な潤滑油を使って行う必要があります。
(7) 傷を作らないように、指のささくれをむしったり、にきびをひっかいたり、つぶしたり、はさみ・包丁・ナイフなどで怪我をしないようにしましょう。 (手袋の使用)
(8) 切り傷、擦り傷は、すぐにぬるま湯で洗い、石鹸できれいにして、傷が深くなければ、オキシドールで消毒し無菌包帯で覆っておきましょう。詳しくは主治医に聞いてください。
(9) 髭を剃る場合は、皮膚を傷つけないように電気かみそりを使いましょう。
(10) 口腔内の清潔は大切ですので、歯肉を痛めないように軟らかい歯ブラシを使いましょう。
(11) まわりに、風邪をひいたり、はしか、水痘にかかっている人がいたら近づかないようにしましょう。また、人ごみは避けるようにしましょう。
(12) 入浴の際は熱いお湯に入らず、程よい温度で、毎日入りましょう。お風呂から上がったときは皮膚はゴシゴシ擦らずに、押し拭きをして乾かしましょう。
(13) 踵がカサカサしたりしているときは、ローションやオイルで手入れをしておきましょう。
(14) 庭仕事をしたり、動物の世話をする場合は、必ず手袋をして手を保護しましょう。
(15) 主治医に相談しないで予防注射をうけないように気を付けましょう。
(16) 発汗抑制剤は汗腺を塞いで感染を促す場合があるため、どうしても必要ならデオドラント(液化消臭剤)を使用しましょう。
(17) 疲れたときには日中でも休息時間を取るようにしましょう。
(18) 日焼け止めを使用しできるだけ日光は避けましょう。
(19) 爪のあま皮は、つまみ取ったり刃物で切り除かず、あま皮落としクリームを使用しましょう。
(20) 感染症の危険を減らすため、女性はタンポンよりも生理用ナプキンを使用しましょう。
(21) 肺炎のリスクを減らすため、目覚めている間は肺を十分に拡張させて、頻回に数回ずつ深呼吸をしましょう。

2)感染の徴候
(1) 発熱(37.8°C以上の発熱) 、寒気、発汗
(2) 一日に3回以上の軟便、下痢(化学療法の副作用としても)
(3) 排尿時のやけるような感じ、頻尿、血尿
(4) 激しい咳や喉の痛み。
(5) 異常なオリモノの増加、陰部のかゆみ
(6) 傷口、吹き出物の周囲の発赤、または腫れ
(7) 目の充血、目やに
(8) 口内炎(口腔内の発赤、痛み)

何か感染徴候があるときには、目覚めている間は4時間毎に体温を測定してください。
感染症にかかったら、1日に約 1,800~2,800ml の水分を摂取する必要があります。心臓や腎臓に障害のある人は、医師と相談をしてから飲用を進めてください。
この様な兆候がでたときはむやみに鎮痛解熱剤を使わずにすぐに主治医に連絡を取りましょう。白血球数が少ない患者さんに感染がおこった場合は、一般的には入院して、抗生物質で治療します。

分子標的薬で癌と共存する時代が来る

第48回日本呼吸器学会学術講演会会長の曽根三郎氏に聞く
分子標的薬で癌と共存する時代が来る【呼吸器学会2008】
関本克宏=日経メディカル別冊

徳島大学呼吸器・膠原病内科学分野教授の曽根三郎氏

――呼吸器学会の会員数は1万名を超え、そのカバー範囲は呼吸器学のあらゆる領域に及んでいます。これらの人たちが一同に会して、同じベースで議論をすると言うことが可能なのでしょうか。

曽根 もちろんです。肺は複雑な臓器で、急性毒性や間質性肺炎も出やすく、癌であっても感染症であっても、肺の特性を知ることが非常に重要です。たとえば肺癌の治療を行うためには、癌をとりまく肺の状態に常に関心を払わなくてはいけないのです。私もその渦中にいたゲフィチニブ(イレッサ)の副作用問題も、呼吸器科医が処方していたならばあそこまで大きくはならなかったでしょう。癌を治療するのではなく、癌を持っている患者さんを治療するという観点が、特に重要な分野なのです。

――ゲフィチニブの副作用のみがクローズアップされた時、分子標的薬の特性、つまり特定の集団にのみ強力な効果を示す薬剤であるということをアピールできなかったのでしょうか。

曽根 今なら言える。でもあの時は、患者さんがみんな待っていたのです。そして一斉に使ってしまった。ただし、これからの道筋は決まっています。つまり、有効性を予測できるマーカーを同時に開発しないと、薬剤は承認されなくなるのです。2006年に、癌の分子標的薬をテーマにした国際シンポジウムで、Drug-Diagnostic Co-Developmentという、癌治療効果予測マーカーの同時開発に向けた重点政策が明らかにされました。その時FDAの担当者がこう言ったのです。

我々は間違っていた。患者は皆、抗癌剤の副作用で苦しんでいる。分子標的薬はそうしてはいけない。投与する患者を絞り込むとマーケットが縮小するという利益相反が存在するが、これに対して開発をプッシュしなかったのはFDAの責任である――と。

――そして現在、バイオマーカーに関する論文の数が飛躍的に増えています。

曽根 それはマーカーの開発が一筋縄ではないことの表れでもありますね。EGFR-TKI(上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ)阻害剤であるイレッサは、チロシンキナーゼドメインに遺伝子変異があると奏功率が高いことが明らかになっていますが、変異がなくても12%の患者には効くのです。

 我々は文科省のがんトランスレーショナル事業において、12個の遺伝子の発現を解析して治療効果を予測するQUEENアッセイと呼ばれる方法を他の施設と共同開発しています。この方法で特徴的なのは、癌が小さくなる患者(CR+PR)の予測だけでなく、大きくも小さくもならない、Long SDの患者の予測ができることです。

 ゲフィチニブを用いたスタディ、IDEAL-1では、CRが0%、PRが18.5%、そしてSDが35.9%という結果でした。そして続くIDEAL-2では、PRの生存期間平均値が16.3カ月だったのに対し、SDのうち症状が改善したグループでは13.7カ月という結果が得られました。ちなみにPDでは5.4カ月です。つまり、SDの中には、PRに劣らない予後が得られる患者が存在するのです。この患者は、分子標的薬の非常によい投与対象になるのではないでしょうか。なぜならば、分子標的薬は繰り返し投与できるからです。

 これまでの抗癌剤治療では、サードライン以降の治療効果は極めて限られ、逆に副作用は増大して行きました。例えれば、ハードルが徐々に高くなり、背中に背負った副作用という荷物は重くなって行くわけです。これに対して分子標的薬では回数を重ねてもハードルは同じ高さのままで、荷物の重さも変わりません。

 これまで我々は、CRに囚われすぎていたのではないでしょうか。副作用もグレード3までなら我慢せよと。しかしこれからは、癌と共存していくことができる。患者のQOLを考えても、どちらが取るべき方向かは明らかでしょう。そして共存しながら、年単位で生存期間を延ばせたらいいなと考えています。極端な言い方をすれば、奏功率なんて医者の視点でしかない。

――話は変わりますが、先日の地方紙に、禁煙の大切さを書かれていましたね。

曽根 禁煙が一番早いんですがね。病棟を回ると、無力感を感じることがあるんですよ。特に男性は、みんな喫煙者ですから。患者さんには、「息子には禁煙するように言ってください」といつも言っているんです。

第6回日本臨床腫瘍学会学術集会 2008年4月8日

第6回日本臨床腫瘍学会学術集会
悪性リンパ腫の治療戦略をアップデートする【臨床腫瘍学会2008】
八倉巻尚子=医学ライター 2008. 4. 8

 「“悪性リンパ腫”といっても一括りにはできない。非常に多様な腫瘍であり、どのようなリンパ腫なのかを知らなければ治療方針は立たない」──。福岡大学筑紫病院内科第二の鈴宮淳司氏(准教授、診療部長)は、福岡市で開催された第6回日本臨床腫瘍学会学術総会(3月20~21日)の教育セッション「悪性リンパ腫に対する標準的治療」でこう強調した。

 リンパ腫とはリンパ球に由来する悪性腫瘍の総称であり、WHO分類で病型は約30種類もある。その治療法も病型や病期などでそれぞれ異なるが、悪性リンパ腫の中で最も患者数の多い、びまん性大細胞B細胞性リンパ腫など、一部のリンパ腫では標準的治療が確立しつつある。

罹患率は10万人あたり10人

 悪性リンパ腫は組織型からホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の二つに分けられる(下表参照)。非ホジキンリンパ腫は細胞系統によって、B細胞性リンパ腫と、T/NK細胞性リンパ腫に分類され(WHO分類)、さらに増殖スピードによって低悪性度(indolent lymphoma)、中高悪性度(aggressive lymphoma)、高高悪性度(highly aggressive lymphoma)に、発生部位によってリンパ節(節性)とリンパ節以外(節外性)に細かく分類されている。

 日本では欧米に比べてホジキンリンパ腫の割合が約5~10%と少なく、T細胞性リンパ腫の割合が高いのが特徴だ。悪性リンパ腫の発症数は世界的にも増加傾向にあり、節性リンパ腫は年に約2%、節外性リンパ腫は年に約5%も増加するといわれている。「年間発症率は、欧米では10万人あたり20人、日本でも10万人あたり10人と、日本の罹患率は食道癌よりすこし少ない程度」と鈴宮氏はいう。子宮頸癌などの婦人科癌も同程度であり、悪性リンパ腫の発症率は決して低いとはいえない状況だ。

 鈴宮氏によれば、現在のところ標準的治療が確立しているのは、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫のびまん性大細胞B細胞性リンパ腫で、濾胞性リンパ腫、リンパ芽球リンパ腫、バーキットリンパ腫、胃マルトリンパ腫、慢性リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病などに準標準的治療があるという。以下、これら病型に対する治療法を紹介する。

■ 濾胞性リンパ腫

 低悪性度リンパ腫である濾胞性リンパ腫では、限局期に対しては病変部放射線治療を行うが、進行期に対しては「R-CHOP療法が準標準的治療」(鈴宮氏)と位置づけられている。

 また濾胞性リンパ腫においても、イブリツモマブによる地固め療法で部分寛解から完全寛解へ転化し、無治療群に比べて、無増悪生存期間が有意に延長することが、第Ⅲ相臨床試験(FIT試験)で示された。イブリツモマブが濾胞性リンパ腫の標準的治療の1つになるかどうか、今後の成果が待たれる。
 
 
 
 
 

リツキサン維持療法の2004年の記事

進行期低悪性度非ホジキンリンパ腫 化学療法後のリツキシマブ投与で進行を遅らせる効果 2004.06.06

 低悪性度非ホジキンリンパ腫のステージ3と4の患者に対し、化学療法を行った後のリツキシマブ(商品名:リツキサン)による維持療法についての第3相試験で、病気の進行を遅らせる効果があるとする研究結果が出た。6月5日の一般口演で、米New York大学のHoward S. Hochster氏らの研究グループ、Eastern Cooperative Oncology Groupが報告したもの。

 同研究グループは、ステージ3と4の濾胞性または小リンパ球性非ホジキンリンパ腫の患者に対し、標準的なレジメンであるCVP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン)化学療法を行った。なお、被験者はそれ以前に非ホジキンリンパ腫に対する治療を受けたことはなかった。

 その後、被験者を無作為に2群に分け、一方のグループに対してのみ、リツキシマブ375mg/m2を、6カ月毎に4回、2年間に渡り投与した。その結果、化学療法を終えて2年後の時点で、病気の進行が認められなかった人の割合は、リツキシマブを投与しなかった対照群(149人)では42%だったのに対し、リツキシマブ群(154人)では74%と大幅に上回った。さらに4年後で見てみると、同割合は対照群で34%、リツキシマブ群では58%だった。なお、被験者のリンパ腫の型や化学療法後に残った腫瘍の量、化学療法前の腫瘍の量にかかわらず、同様な差が見られたという。

 なお今回の研究では、CVP化学療法後のリツキシマブの維持療法による、生存率の改善はみられなかった。この点についてHochster氏は、進行の遅い非ホジキンリンパ腫を対象としているため、さらに5年ほど長く患者を追跡することが、生存率の改善を見極めるためには必要なのかもしれない、としている。(當麻あづさ、医療ジャーナリスト)

ろ胞性リンパ腫にリツキシマブの維持療法が有効

ろ胞性リンパ腫にリツキシマブの維持療法が有効

 ろ胞性リンパ腫に対して抗CD20モノクローナル抗体リツキシマブの維持療法としての投与が、安全で有効であることがわが国の臨床試験でも明らかとなった。10月6日から8日に福岡市で開催された日本血液学会・日本臨床血液学会合同総会で、関西医科大学医学部血液呼吸器膠原病内科の森眞一郎氏が発表した。研究グループは今後、大阪リンパ腫研究会において、前向き多施設臨床試験を今年中に開始したいとしている。

 森氏らのグループは、初回治療としてリツキシマブ375mg/m2 を一週ごとに4週間投与、次に維持療法として6カ月ごとに4回投与することを1サイクルとして4サイクル行い、2年間投与した。腫瘍量が多く予後不良が予想される症例には、非ホジキンリンパ腫に対する標準的化学療法であるCHOP療法(シクロホスファミド+ドキソルビ シン+ビンクリスチン+プレドニゾロン)を2コース先行投与した。全10例中5例に対しCHOP療法が先行投与された。

 初回治療後のCR(完全寛解)は3例でPR(部分寛解)が5例、SD(安定状態)が2例だったが、維持療法開始後(最高反応時)はCRが7例、PRが0例、SDが1例、悪化(PD)が2例となった。維持療法開始後4例がPRからCRへと移行した。無増悪生存率は平均観察期間が28.5カ月で64.0%、全体の生存率は平均観察期間が28.5カ月で75.0%だった。一方、グレード3以上の有害事象は、血液学的毒性が2例、低血圧症が1例だった。その他、著明な低ガンマグロブリン血症が1例認められた。

(横山 勇生) 2006年10月11日

白血球を上げる注射

午前中に、白血球を上げる注射を打ちに病院まで行った。

ウィッグをかぶり、大きなマスクをして、出ているのは眼だけくらい。 これでサングラスでもかけたら通り魔と間違えられる様相。

病院に行って帰って来るまで2時間くらいかな。途中、どこへも立ち寄らない。 まだ1,000きっているかもしれないから、危ないし。。今まで順調に来ているからいいようなものの、何か合併症を起こすと体力のない私は命取りになりかねない。

入院していた時は「何事もなるようにしかならないものだし。」と観念してのんびりしていた私だったけど、(主人にはノホホンとし過ぎだと言われる)
家に帰ってゆっくり資料を読むとだんだんブルーになって来た。

この調子で第一段階が仮にうまく行っても、次の時が大変だぞ。新薬も出てきたけれど、どれをとってもリスクがつきまとうし、体力のない私はきっとリスクでお陀仏になりそう。これは苦しそうーとため息が出る。

とりあえずは何とか体力を戻し,且つ増進させないといけない。なんかうまくいく方法を教えて! 昨日、Dr.に食べているのに体重が増えませんと言ったら、あと6回のサイクルが終わったら増えますよ、だって。そんな先まで待っていられない、このガリガリ何とかしたいのに。

退院してから初めての通院日

今日は退院してから初めての通院日。 心配だったのか、主人がついて来てくれた。19日の木曜日に一度めまいがしたから、あやしいと思ったのかも。
めまいは血圧が低いからだと思う。

きょうの血液検査でも白血球が820/ulしかなかった。 1000をきっているのはよくない。それで早速、白血球を上げる注射をしてもらう。

明日もあさってもそれだけのために来ないといけないだと。。。
なんと面倒な。いつの時間に行ってもいいそうなんだけど。 これがアメリカだと自分で注射するはめになるんだそうだ。 でも皮下注射を自分ではできないよね。こわくて。

家での日々は結構元気で何でもやる気が起こる日と、なんとなくだるくて最低限しかしたくない日がある。 どうしてかなぁ。それは朝、起きた時にだいたい決まる。
前もって調子を予測できればいいんだけど、その日になってみないとわからない。

ところで第3回目の抗癌剤治療は7月1日がリツキサン、2日が抗癌剤点滴という日程になりました。もっとも白血球の戻りが悪いと抗癌剤は二三日延期されるとのことでした。