骨髄非破壊的同種移植 2008年

55歳以上の症例における骨髄非破壊的同種移植:非血縁者臍帯血移植はHLA一致血縁者がいない症例にとって安全でかつ有効である Biol Blood Marrow Transplant 14:282-289, 2008

 強度減弱前処置治療は合併症、死亡率が低く、高齢者における造血幹細胞移植を可能とした。臍帯血はHLA一致血縁ドナーや非血縁ドナーに代わる移植源として検討されてきた。今回、我々は高齢者に対する臍帯血を用いた強度減弱前処置移植が安全で有効であると仮定し、HLA一致血縁者間移植(n=47)とHLA一致あるいは一座不一致血縁ドナーが存在せず臍帯血移植(n=43)を行った55歳以上の症例における治療関連死と全死亡率を比較した。

強度減弱全処置治療法は全身放射線療法(2Gy)とフルダラビンおよびエンドキサン(n=69)、フルダラビンおよびブスルファン(n=16)、フルダラビンおよびクラドルビン(n=5)により施行された。年齢の中央値はHLA一致血縁者間移植と臍帯血移植でそれぞれ58歳(55~70歳)および59歳(55~69歳)であった。最も多い疾患は急性骨髄性白血病/骨髄異形成症候群(50%)であった。臍帯血移植を受けた症例では88%が2つの臍帯血、93%がHLA1座あるいは2座不一致臍帯血が使用された。経過観察期間の中央値は27ヶ月(12~61ヶ月)であった。

HLA一致血縁者間移植と臍帯血移植の3年進行停止生存率はそれぞれ30%ならびに34%(p=0.98)、全生存率は43%ならびに34%(p=0.57)で両者に有意差は認められなかった。急性移植片対宿主病II~IVはそれぞれ42%ならびに49%(p=0.20)、移植後第180病日の移植関連死亡は23%ならびに28%(p=0.36)と同等であった。

しかし臍帯血移植群では1年の慢性移植片対宿主病は40%とHLA一致血縁者移植(17%)と比べて有意に高率に発症した(p=0.02)。多変量解析では移植片の種類は移植関連死亡ならびに全生存率に影響はなく、hematopoietic stem cell transplantation comorbidity indexのみが独立した因子であった。臍帯血移植はHLA一致血縁者ドナーのいない高齢者の代替えの移植片となり得るものと考えられる。強度減弱前処置治療を用いた臍帯血移植は年齢およびHLA一致血縁者が存在しないために移植適応外とされていた高齢者について移植適応が広がる。高齢者に造血幹細胞移植を行う際には併存症の評価が重要である。

相本瑞樹(平成20年4月21日)

http://medwebsv.med.osaka-cu.ac.jp/labmed/

高齢者のびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫例に対するCHOP14にリツキサン併用 2008年

高齢者のCD20陽性B細胞性aggressive lymphomaに対する6または8コースのCHOP14にリツキサン併用の有無に対する無作為比較試験 (RICOVER-60) Lancet Oncol 9:105-16,2008

(考察)
6コースのR-CHOP-14療法は6コースのCHOP-14療法に比べEFSやPFSやOSを大きく改善させた。今回の検討では治療反応例に対し6コース後に化学療法を追加する必要性はなかった。今回の研究で評価した4つのregimenで、6コースのR-CHOP14療法は高齢者の治療として優先される治療法であるものと考えられた。

(はじめに)
CHOP (シクロフォスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチンおよびプレドニン併用)療法は非ホジキンリンパ腫(NHL)に対する治療として一般的に使用されている。高齢者のびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の予後は21日毎にCHOP療法を施行するCHOP-21療法の治療期間を14日に短縮したCHOP-14療法あるいはCHOP-21療法にリツキシマブを併用したR-CHOP-21療法の開発によって改善している。今回の無作為比較試験では高齢者のびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫例に対する6または8コースのR-CHOP-14療法、6または8コースのCHOP-14療法の治療効果を評価した。

(方法)
1222 例の高齢者(61-80歳)症例が6または8コースのCHOP-14療法にリツキシマブを併用するかしないかを無作為に割りつけた。放射線療法は節外性病変の有無に関係なく診断時の巨大病変に対しては計画した。主評価項目はevent free survival(EFS)、副次評価項目は効果(response)と治療中のPD(progression during treatment)とPFS(progression-free survival)とOS(overall survival)
と毒性頻度の評価であった。

(結果)
3 年のEFSは6コースのCHOP-14群では47.2%で、8コースのCHOP-14群では53.0%で、6コースのR-CHOP-14群では66.5%で、8コースのR-CHOP-14群では63.1%であった。6コースのCHOP-14群と比較して、8コースのCHOP-14群では3年のEFSが5.8%改善し、6コースのR-CHOP-14群では19.3%改善し、8コースのR-CHOP-14群では15.9%の改善が認められた。3年のOSは6コースのCHOP-14群では67.7%、8コースのCHOP-14群では66.0%、6コースのR-CHOP-14群では78.1%、8コースのR-CHOP-14群では72.5%であった。6コースのCHOP-14群と比較して、8コースのCHOP-14群ではOSが1.7%低下し、6コースのR-CHOP-14群OSは10.4%改善し、8コースのR-CHOP-14群では4.8%改善を認めた。6コースのCHOP-14群での多変量解析で判明した予後因子で補正しても、3年のEFSは3群すべて6コースCHOP-14群よりも有意に改善していた。

Progressio n-free survival(PFS)は6コースのR-CHOP14群と8コースのR-CHOP14群で有意な改善が認められた。Overall survival(OS)は6コースのR-CHOP群でのみ有意な改善が認められた。4コース後にPRに達した症例の予後は計8コースの治療を行っても6コース群を上回らなかった。

寺田芳樹(平成20年3月10日

経口フルダラビンとリツキシマブの併用

経口フルダラビンとリツキシマブの併用が再発難治性の低悪性度リンパ腫に有効
第49回米国血液学会(49th ASH) 2007. 12. 10

 再発、難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫を対象に、代謝拮抗性の抗癌剤で経口剤の「フルダラ錠」(一般名リン酸フルダラビン)と抗ヒトCD20抗体製剤「リツキサン」(一般名リツキシマブ)を併用投与すると高い効果が得られることがわが国で行なわれた多施設フェーズII臨床試験の結果明らかとなった。静脈投与のリン酸フルダラビンとリツキシマブを併用すると、高い効果が得られることは既に明らかになっていたが、より簡便な経口剤でも同等の効果があることが示されたことになる。成果は、12月8日から11日までアトランタで開催されている米国血液学会で、東北大学大学院医学系研究科講師の石澤賢一氏によって発表された。

 フェーズII試験の対象となったのは、2レジメンまでの化学療法が受けたことがある成人の患者で、リツキシマブの投与回数は16回までの患者。4週間を1サイクルとして、1日目から5日目まで40mg/m2の経口フルダラビンを投与し、1日目にリツキシマブを375mg/m2投与した。投与サイクル数は6サイクルまでとした。41人の患者が登録され、そのうち38人がろ胞性リンパ腫、2人がMALTリンパ腫、1人が小リンパ球性リンパ腫だった。投与サイクル中央値は6サイクルで、被験者のうち、66%の患者が6サイクルの治療を完了することができた。

 その結果、全体の奏効率は76%(41人中31人、95%信頼区間 60%-88%)で、完全奏効率は68%(41人中28人)となった。全患者の無増悪生存期間は10.8カ月で奏効した31人の患者の無増悪生存期間中央値はまだ到達していない。以前にリツキシマブの投与を受けていた患者の無増悪生存期間中央値は10.8カ月で、リツキシマブを以前に投与していなかった患者の無増悪生存期間中央値は、まだ到達していない。全生存期間の中央値も到達していない。

 一方、毒性は主に血液学的なもので、一過性で管理可能だったという。多くみられたグレード4の血液学的な毒性は、リンパ球減少(98%)、好中球減少(68%)、白血球減少(41%)だった。グレード3以上の非血液学的な毒性が29%の患者にみられ、グレード4の口内炎と高尿酸血が1例ずつ認められた。

(横山 勇生=日経メディカル別冊)

ゼヴァリンの地固め療法

ゼヴァリンの地固め療法

米ジョージア州アトランタ、2007年12月9日 ― ゼヴァリン(〔90Y〕-イブリツモマブチウキセタン)の地固め療法が、進行性濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma)での無増悪生存期間を有意に延長したこと示す新たなデータが、第49回米国血液学会議(ASH)で発表されました。この初めて発表されたFIT (First-line Indolent Trial) 試験の結果によると、無増悪生存期間の中央値が、無治療群では13.5ヶ月であったのに対して、ゼヴァリン投与群では37ヶ月でした(p<0.0001)。 サブグループ解析によると、無増悪生存期間の中央値は、初回の寛解導入療法に対して部分寛解を示した患者さんにおいて、無治療群では6.3ヶ月に対してゼヴァリン投与群では29.7ヶ月 (p<0.0001)、完全寛解を示した患者さんにおいては、無治療群で29.9月に対してゼヴァリン投与群では54.6ヶ月(p=0.01)でした。 「ゼヴァリンの単回投与で、好ましい安全性を保ちながら無増悪生存期間が2年間延長したことに感銘を受けています。今回の結果は、私たちが患者さんの希望に一歩一歩近づいていると知らしめるものです。そして、放射免疫療法が、濾胞性リンパ腫の治療に最も効果的な単一薬剤であることを示すものです」とFIT試験の主任治験責任医師であるアントン・ハーゲンビーク教授(アムステルダム学術医療センター)は述べています。

ゼヴァリン地固め療法後、初回の寛解導入療法に対して部分寛解を示した患者さんの77%が、完全寛解に転化しました。ゼヴァリン投与群のうち、76%が完全寛解、11%が未確認寛解を示し、全体の奏効率は87%でした。

「FIT試験によって、ゼヴァリンのファーストライン地固め療法による奏効性の改善と寛解期の延長が示されたことを、大変嬉しく思っています。われわれの目的は、患者さんにできるだけ早く有効な治療手段を提供することです。それゆえ、FIT試験の良好な結果は臨床現場にとって大変重要なものとなります」と、バイエル・シエーリング・ファーマ社、医薬品開発グローバル責任者、ケマール・マリックは述べています。

分子レベルでの寛解をリアルタイム定量的 PCR法(RQ-PCR)で測定したところ、ゼヴァリン投与群では、90%の患者さんが陽性から陰性へ転化しました。これは、無治療群と比較して、ゼヴァリン投与群で無増悪生存期間が有意に延長したことと関連しています。

FIT試験では、ゼヴァリン地固め療法が、患者さんの生活の質(健康に関連した生活の質)に及ぼす影響も調べました。2つの治療群において、健康に関連した生活の質を示す変数に差は見られませんでした。この結果は、ファーストライン療法が奏効した進行性濾胞性リンパ腫の患者さんに対するゼヴァリン地固め療法が、患者さんの健康に関連した生活の質に影響しないことを示唆しています。

また、ゼヴァリン投与群のうち、放射線量測定データが有効な患者さんに対して被曝評価を行ったところ、ゼヴァリン投与による被曝量が健康な他臓器に及ぼす影響は安全限度内であり、血液毒性と投与量から推定される被爆放射線量との関連性は見られませんでした。これらの結果は、今までに発表された試験結果と一致しており、全身腫瘍組織量が少ない患者さんに対するゼヴァリン投与が安全であることを示唆しています。

FIT試験について
ゼヴァリンのFIT(First-line Indolent Trial)試験は、多国間無作為化試験で、寛解導入化学療法を受けた後に完全寛解(CR)または部分寛解(PR)を示した進行性濾胞性リンパ腫(ステージⅢまたはⅣ)の患者さんに対してファーストライン地固め療法としてゼヴァリンを単回投与し、その評価を行いました。FIT試験の目的は、非ホジキンリンパ腫のなかでも最も一般的な濾胞性リンパ腫のファーストライン治療を行ったあとの地固め療法としてゼヴァリンを用いた時のベネフィットと安全性の評価を行うことです。

ファーストライン地固め療法としての「ゼヴァリン」について
地固め療法(consolidation therapy) は、初回治療のファーストライン寛解導入療法(化学療法や免疫化学療法など)により寛解期に至った患者さんに対して施される治療法です。その目的は、患者さんの治療に対する反応性の質を高め、寛解期間を延ばすことにあります。バイエル・シエーリング・ファーマ社は、濾胞性リンパ腫におけるファーストライン地固め療法への適応拡大を行うために、欧州医薬品庁(EMEA)に対してゼヴァリンの適応追加審査手続き(Type II Variation) を完了しました。

放射性同位体イットリウム90による放射免疫療法剤「ゼヴァリン」について
ゼヴァリンは、リツキシマブ使用後の再発、もしくは難治性のCD20陽性濾胞性B細胞非ホジキン悪性リンパ腫の成人を適応として2004年から欧州で使用が認められています。ゼヴァリン([90Y]イブリツモマブチウキセタン)は、抗CD20モノクローナル抗体の腫瘍認識能と、イットリウム90が発する放射能による腫瘍破壊能を併せ持つ薬剤で、非放射免疫療法に比べて高い有効性を示します。この放射性抗体は、腫瘍細胞に選択的に結合し、近傍の標的となる悪性リンパ腫細胞に致命的な障害を与えます。この作用はがん細胞が作る幾重もの層に達し腫瘍組織全体を破壊します。この治療法は、腫瘍組織への高い生物学的利用率(バイオアベイラビリティ)が確実で、体内を循環する正常なリンパ細胞が放射能により破壊されることを防ぎます。

ゼヴァリンの問題点

現在申請中のゼヴァリンの問題点が指摘される

 現在、再発または難治性の低悪性度または濾胞性B細胞性非ホジキンリンパ腫を対象に承認申請中の、放射性免疫療法薬イブリツモマブ(商品名「ゼヴァリン」)に関する、認可に当たっての問題点が明らかになった。国立がんセンター中央病院血液内科の渡辺隆氏が、11月5日に東京都内で開催されたNPO法人グループ・ネクサス主催のフォーラムで指摘した。

 ゼヴァリンは、抗CD20抗体イブリツモマブにイトリウム-90(90Y)が付いた構造をしており、Bリンパ球表面のCD20抗原に結合した後、β線を出し抗腫瘍効果を示す放射性免疫療法薬。イトリウム-90は純β線源のため、治療時の遮蔽等が不要なのが特徴。

 深部組織や新生血管の少ない組織など、従来抗CD20抗体の届きにくかった場所に対しても効率的な治療が可能で、再発が多く、進行すると未だ確立された標準治療のない濾胞性B細胞性非ホジキンリンパ腫への効果が期待されている。

 ただし、放射性同位元素(RI)を標識した抗体は、調整後長時間安定ではないので、病院内でのRI標識が必要。欧米にはRIを扱う専門薬剤師がいるが、日本にはこうした資格は存在しない。血液内科医、核医学専門医、診療放射線技師など、関係者の協力体制が欠かせないことから、認可後、薬剤を実際に使用できる施設は限られることが予想される。

 渡辺氏は、「期待の高い薬剤だが、治療薬なので、PET用診断薬のフルオロデオキシグルコース(18F-FDG)のような提供は難しいのではないか。放射性物質を扱える人員的な問題など、国内の体制整備が急がれる」と話した。

(小又 理恵子)

ゼヴァリンとエプラツズマブ

今宿晋作の未承認新規抗がん剤シリーズ 第4回
 
Zevalin, イブリツモマブとエプラツズマブ(Epratuzumab)

再発・治療抵抗性B細胞型悪性リンパ腫の治療に、放射性ヨウ素-131標識(131I)トシツモマブ、イットリウム-90標識イブリツモマブなどの放射性同位元素で標識されたマウス抗CD20モノクローナル抗体の有効性が知られてきた。すなわち、B細胞リンパ腫に対して従来のキメラ型ヒト化抗CD20抗体(リツキサン、rituximab)にこれら放射性物質標識抗CD20抗体を併用する治療研究が精力的に進められ、リツキサン単独の効果を上回る抗腫瘍効果が得られる可能性が明らかになっている。

ゼヴァリンはイットリウム-90標識イブリツモマブのことで、リツキサンによるリンパ腫細胞攻撃だけでなく、放射線による周囲の細胞への攻撃作用も期待できる薬剤として悪性リンパ腫の治療に用いられる。

アメリカではイブリツモマブが2002年2月、トシツモマブの承認が2003年6月にすでに承認されているが、日本では治験終了後、日本シエーリング社からB細胞性非ホジキンリンパ腫に対する治療薬SHL749(イブリツモマブ)として承認申請が出されている段階である。

本剤はオーファンドラッグの指定を受けているため、申請から1年程度で承認される可能性があるのではないかとされている。

本剤による治療『投与方法』の概要は以下のようになる。

ゼヴァリンは点滴静注薬で、この薬が使用されるのは、リツキサンとの併用としてだけである。

以下の 2 ステップのプロトコールに従って投与する。

ステップ 1 : リツキサンをゆっくり点滴する(通常の点滴時間は 4~6時間)。この点滴が終了後 4時間以内に、放射性の追跡用物質(トレーサー)を注射(静脈へ 10分間かけて)する。
その後、131Iを用いた全身の放射線スキャンを、2~24時間、48~72時間、場合によって 96~120時間に実施する。これは、薬の身体全体への分布を確認するためである。この結果、骨髄への取り込みがなければ、ステップ 2 へ進む。

ステップ 2 : ステップ 1 終了から 7~9日後に、リツキサンをステップ 1 と同様にして点滴する。リツキサン点滴の終了後 4時間以内に、ゼヴァリンの必要治療量を 10分間かけて点滴する。

ゼヴァリンの『副作用のうち高頻度なもの』としては血球減少であり、これにより、感染症、貧血、出血のリスクが増大する。『副作用のうち稀だが重要なもの』としてはリツキサンとの併用メニューによる治療で、重症の点滴反応が起きることがある。

これは最初のリツキサン点滴の間、又は、ゼヴァリン点滴後 30~120分後に起きるので注意が必要である。また、放射性物質である為、強い骨髄抑制が出るので化学療法との併用は避ける。あるいは悪性リンパ腫細胞の骨髄浸潤の強い例は治療適応にならないといった注意点がある。

もう一つの新しいBリンパ腫治療薬としてエプラツズマブ(Epratuzumab)がある。 これはヒト化抗CD22IgG1抗体である。リツキサンとの併用で治療抵抗性・再発悪性リンパ腫の治療に用いられる。

CD22は濾胞性リンパ腫および彌慢性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)の82-99%に発現している。CD20を標的としたリツキサンとの併用により抗リンパ腫効果が相乗化されると考えられる。

このプロトコールでは本剤は360mg/m2を60分以上かけて点滴静注し、続いてリツキサン365mg/m2を点滴静注する。この組み合わせを週1回、計4週間投与する。リツキサンの作用機序とエプラツズマブのそれは若干異なるという。

リツキサンに抗ヒトIgGFcγ抗体を併用するとヒトリンパ腫細胞の増殖を著明に抑えるが、エプラツズマブにはそのような作用はなく、一方、抗IgM抗体で刺激するとエプラツズマブは増殖抑制に働くがリツキサンは働かない。抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)はエプラツズマブで働くという。

一方で、周知のようにB細胞は多くの自己免疫疾患の発症に関与しており、自己免疫疾患に対するリツキサンの有効性については以前に述べたことがあるが、エプラツズマブも全身性エリテマトーデス(SLE)やシェーグレン病などに有効性が認められている。SLEやシェーグレン病に対する治験ではエプラツズマブは1回量360 mg/m2を2週毎に計4回投与され6ヶ月間の追跡で有効と評価されている。エプラツズマブの副作用はリツキサンのそれに準ずる。

http://www.mikanbox.com/md-lab/column/imashuku/Column4/column4_4.html

グループ・ネクサス 代表天野さん

 悪性リンパ腫には約30種類のタイプがあり、どの種類のリンパ腫であるかによって治療法も異なります。まずは、自分のタイプを知り、治療法について情報を集めることが非常に重要だと思います。そして、分からないことは主治医に納得がいくまで聞けばよいでしょう。

 治療を受けていく間には、幾つもの分かれ道があります。かなり副作用が強くても積極的な治療を受けたいのか、病気になる前と同じような生活を続けることを優先したいのか、自分の価値観で選ばなければいけない局面に直面することもあるでしょう。自分の命や生き方にかかわることです。これを選べば100%治るというものはなく、どの治療法にも副作用もあるわけですから、医師に相談しながら、どの道を進むか自分で決めたほうが後悔は少ないと思います。

 それから、悪性リンパ腫は血液の悪性腫瘍ですから、「血液内科医」と呼ばれる血液疾患専門の医師の治療を受けることも大切です。参考までに、ネクサスのホームページでは、日本骨髄バンクの移植認定施設、日本臨床腫瘍研究グループのリンパ腫研究グループ参加施設、日本血液学会の研修施設をまとめた医療機関リストを掲載しています。

 治療には抗がん剤を使うことがほとんどですが、その抗がん剤の種類や量、期間がリンパ腫のタイプによって異なるうえ、治療法は日進月歩です。悪性リンパ腫や白血病などの治療をほとんどしたことのない先生が、最新の情報を取り入れつつ、適切な抗がん剤治療を行うのは難しいのが現実です。なかには、専門外の医師の治療を受けたために、完治するために必要な量の抗がん剤を投与してもらえず、そうこうするうち抗がん剤が効かない状態になって、治療が難しくなってしまったという人もいます。そんなことにならないためにも、悪性リンパ腫の治療経験が豊富な血液内科医の治療を受けましょう。

 私自身、2000年に悪性リンパ腫と診断され、2001年に発足したグループ・ネクサスに、患者の1人として参加しました。私は発病当時20代で、元気な友人たちから取り残されてしまったような疎外感を抱くこともありましたが、ネクサスで同じ病気の人たちに出会ったことで、苦しんでいるのは自分だけではないのだと知り安心感を覚えました。悪性リンパ腫は比較的まれながんですから、入院中も病院には同じ病気の人がいなかったというケースも珍しくはありません。ところが、ネクサスの交流会に参加すると、目の前にいる人のほとんどが同じ病気の体験者や闘病中の人なので、それだけで励まされたという方がたくさんいらっしゃいます。

 ネクサスでは、医療フォーラムや交流会などで実際に顔を突き合わせる形の情報提供・情報交換・交流と、インターネットを使っての交流・情報交換を行っています。顔を合わせる形とネット上の活動は車の両輪のようなものです。ネットでの情報交換は毎日でもできますし、入院中などにはとても心強いものです。一方で、実際に会って話し合う形の交流は、同じ病気を体験した人や家族に一度に大勢出会え、ネット上では味わえない癒やし効果があると思います。

 悪性リンパ腫の治療は長丁場になることがほとんどです。息切れしないように闘病仲間を作り、情報戦を闘い抜くつもりでがんばりましょう。(F)

◎参考資料
*グループ・ネクサス http://homepage3.nifty.com/webpage3/nexus/
*『悪性リンパ腫と言われたら』
(グループ・ネクサス編、送料のみ実費負担で無料配布中)
*『臨床雑誌内科―最新悪性リンパ腫診療(Vol.96 No.2)』(2005年8月号、南江堂)
*悪性リンパ腫と戦う会 http://www7.wisnet.ne.jp/~gia/lymphoma/
*血液疾患に関連する情報サイト「海好き」 http://umisuki.org/

濾胞性リンパ腫 国立がんセンター

濾胞性リンパ腫(ろほうせいりんぱしゅ)
更新日:2007年03月17日 掲載日:2006年10月01日

1.濾胞性リンパ腫(Follicular Lymphoma)とは

濾胞性リンパ腫は、病気の進行が比較的遅いタイプ(低悪性度)に分類され、年単位でゆっくりとした経過をたどることが多いリンパ腫です。腫れていたリンパ節が自然に小さくなったり、別なリンパ節が腫(は)れてきたりといった「波」があります。

しかし、リンパ節が腫れる以外は、微熱、体重減少、寝汗や食欲不振などの自覚症状は少ないので、気づかないうちに病期が進んでいる場合があります。そのため、頸部(けいぶ)、腋(わき)の下、足の付け根の痛みのないリンパ節の腫れ(腫脹(しゅちょう))で受診することがほとんどです。その他、健康診断などの胸部レントゲンで、肺のまわり(肺門、縦隔(じゅうかく))のリンパ節の腫れ、腹部超音波検査やCTで、腹部大動脈のまわりや骨盤内リンパ節の腫脹で見つかることがあります。

症状がほとんどないので発見が遅れ、かなり大きなリンパ節腫脹になってから見つかったり、骨髄にリンパ腫の細胞が浸潤(しんじゅん)して貧血や血小板減少の症状で見つかることもあります。他の種類のリンパ腫に比べて、リンパ節以外の臓器(例えば、胃腸、脳、肺等)にがんの浸潤を認めることはあまりありません。つまり、リンパ節に主な病変があり、診断時より病期III/IVの進行期が80%以上を占めることを特徴としています。

この病気は、日本においては悪性リンパ腫の10~15%と頻度は低いのですが、年々増加傾向にあります。比較的高年齢の方(発生のピークは60歳代)に多くみられますが、最近は30~40歳代の若い方にもみられます。経過は緩(ゆる)やかで、はじめは治療に反応しますが、何回も再発するのが特徴です。

2.濾胞性リンパ腫の診断

頸部、腋の下、および足の付け根などのリンパ節の腫脹を認めた場合には、小手術でそのリンパ節を取り出し、病理検査(顕微鏡で組織を見る)を行います。この検査をリンパ節生検といいます。また、縦隔あるいはおなかの中のリンパ節が腫脹している場合、試験的に開胸、開腹してリンパ節を取り出し、病理検査を行います。がんのタイプによって治療法が異なりますので、その結果の病理診断はとても重要です。セカンドオピニオンを求める場合にも、先方の病院で最初の標本を見てもらう必要があります。

3.治療

濾胞性リンパ腫は、抗がん剤の併用療法(いろいろな種類の抗がん剤を組み合わせること)によって大半の方でリンパ節が小さくなり、多くの方では病変がほとんど消失した状態(寛解)になります。しかし、小さくなっても再び大きくなることが多く、完全に治すことは難しい病気です。これは、進行の速い中悪性度以上の非ホジキンリンパ腫に比べると、抗がん剤がむしろ効きにくいためです。

これは抗がん剤が、分裂(1個の細胞が2個の細胞に分かれて殖えること)を盛んに繰り返す細胞に、より強い効果が出るためです。急速に進行するので早めに治療したほうがよい中悪性度以上のリンパ腫に比べ、ゆっくりと進行する濾胞性リンパ腫は分裂している細胞が少なく、化学療法が効きにくいと考えられています。そのため、抗がん剤治療が進歩したといっても、ゆっくりと進行するタイプのリンパ腫にはあまり良い治療法がありません。

従来は、弱い化学療法や放射線療法、場合によっては何も治療しないで経過をみるといった方法がとられてきました。そのうちに、途中で細胞の性格が変化して中悪性度以上のリンパ腫に変わってしまったり、化学療法や放射線療法が効かなくなってきたり、あるいは体が衰弱してしまったりという状態になることがありました。

しかし近年、抗CD20モノクローナル抗体である「リツキシマブ」の出現により、治療の方法が大きく変わってきました。リツキシマブは、CD20というB細胞の細胞表面に見られる特殊なタンパクに結合するモノクローナル抗体です。このリツキシマブはCD20陽性のリンパ腫細胞に結合し、体の免疫の防御システムを介してリンパ腫細胞を死滅させます。濾胞性リンパ腫はCD20を発現しているB細胞リンパ腫ですから、リツキシマブの効果が期待されています。

しかし、それでも残念ながら、いまだに濾胞性リンパ腫の「標準的治療」(確立した治療法として、多数の患者さんに幅広く薦めることができる治療法)は確立しておらず、どの治療を行っても現在のところ「治癒」は難しいと考えられています。そのため、治療の選択肢も多数出てくることになります。主治医およびセカンドオピニオンを通して、自分の人生設計にあった治療方法を自ら選択していくことが大切です。

1)限局期(I期、隣接病変のみのII期)患者さんの治療方針

濾胞性リンパ腫は体の一部にだけ限局した病変はまれ(10~20%)ですが、このような場合には、その部位に対して放射線治療を行うのが一般的です(領域放射線照射といいます)。放射線治療により、約半数の方に10年以上の寛解が期待でき、10年生存率は60~80%です。

しかし、10年以上たっても全身性に再発や進展を来し、生存率は平坦化しない(いつまでたっても病気が進行する)ため、限局した場合といえども治癒を得ることは困難です。また、照射部位を広範囲にしても再発を抑制する効果はなく、むしろ再発後の化学療法の実施を難しくする可能性があり、避ける必要があります。また、治癒が難しいため、高齢者などでは限局期でも病状が進行するまで経過観察をする方法がとられます。

最近ではリツキシマブと放射線の併用治療を行ったり、全身性の再発を減少させるために、放射線と化学療法を併せて使用するなどの臨床試験も行います。しかし、その結果はまだ出ていません。表1に示すような治療が、臨床研究を含めて行われています。

表1 濾胞性リンパ腫、病期I期および連続性II期の治療方針
1. 領域放射線照射(リンパ腫が存在する部位に対する放射線)
2. 症状が無い患者さんに対しては、病勢進行までの無治療経過観察(治療の延期と注意深い観察:Watchful Waiting)
3. リツキシマブ + 領域放射線療法
4. リツキシマブ単剤
5. 放射線療法併用化学療法

2)進行期(隣接病変以外のII期、III期、IV期)患者さんの治療方針
進行期濾胞性リンパ腫は、抗がん剤によって大半の方に病変の縮小効果が認められ、多くの方で病変がほとんど消失した状態(寛解)になりますが、これもまた完全に治すことは難しい病気です。平均生存期間は、10年前後とされています。

これまで「CHOP(チョップ)療法(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)」を中心とした化学療法が行われてきました。III、IV期の濾胞性リンパ腫の患者さんの約80%で寛解が得られるものの、寛解が持続する期間は中央値で約30ヵ月と短く、ほとんどの方が再発し治癒は得られないため、平均生存期間は診断から10年前後とされてきました。

これまでの研究結果によると、症状のない場合や病気が進行する傾向を示さない場合は、 化学療法を早期に開始しても生存期間の延長効果が確認されていません。そのため、症状のない場合は、 診断がついてもすぐに治療を開始しないで、経過観察をする(Watchful Waiting)という選択もあります。ただし、病気の進行が明らかになった場合や症状が出現した場合には、化学療法や放射線療法などの適切な治療を開始する必要があります。

最近になり、B細胞だけに効果があるリツキシマブという治療薬が開発され、濾胞性リンパ腫に対する治療成績の向上が期待されています。リツキシマブの攻撃を受けたB細胞はその活動を停止して、ついには死滅してしまいます。

特殊なタンパク質のため、アレルギー(発熱、発疹(ほっしん)等)が出る場合もありますが、正常な細胞には作用しないので、抗がん剤にみられる吐き気や脱毛などの副作用がありません。また、リツキシマブは他の抗がん剤と異なり、白血球や血小板が減ってしまう副作用が少ないために、抗がん剤の投与量を減らさないで化学療法と併用することができます。

抗がん剤治療の後に再発した濾胞性リンパ腫の患者さんに、リツキシマブを週1回で4回点滴静注すると、50~60%の方に効果があることがわかりました。しかし、リツキシマブ単剤のみでは寛解となる確率は低く、現在ではリツキシマブと化学療法を併用する治療法が盛んに検討され、従来の化学療法単独よりも、治療成績が改善することが期待されています。

濾胞性リンパ腫の治療

(1) 経過観察(Watchful Waiting)
進行が緩やかであることから、特に高齢で無症状の患者さんは、無治療で経過を観察することも、治療上の選択肢となり得ます。ただし、急速な病勢の進行、発熱や体重減少などの全身症状(B症状)の出現、骨髄にリンパ腫細胞が浸潤したことによる血球減少などがみられた場合は、直ちに治療をすることが前提になりますので、外来での注意深い経過観察が必要です。診断から何らかの治療を必要とするまでの平均期間は16~72ヵ月で、中央値は3年程度といわれています。また、診断後すぐに多剤併用化学療法を開始した場合には無病生存率は有意に高くなりますが、生存率には有意差を認めていません。

(2) リツキシマブ単剤での治療成績
初発の濾胞性リンパ腫に対し、リツキシマブの週1回計4回投与(1コース)では、約50%にリンパ節縮小効果があります。効果があった場合にさらに6ヵ月ごとに計4コース繰り返すと、効果があった例は約70%に増加し、5年間病気が悪化しなかった症例(無増悪生存期間)は約35%でした。しかし、この場合も無増悪生存曲線は平坦にならず、リツキシマブ単剤での治癒は期待できないといわれています。

(3) リツキシマブと化学療法との併用の治療成績
リツキシマブ単剤では有効性に限界があるため、リツキシマブと化学療法薬の併用療法によって治療成績を改善させることが期待されています。リツキシマブは作用機序が異なるため、副作用がひどくならずに化学療法薬との併用が可能です。試験管内の実験では、抗がん剤が効きにくかったがん細胞の薬剤感受性を改善することから、両者の併用で治療効果を増強することが期待されています。

しかし現在のところ、リツキシマブと併用する抗がん剤は何がよいか明らかではなく、いろいろな薬剤とリツキシマブとの併用治療法が臨床試験で検討されています。日本では、一般的にCHOP療法(シクロホスファミド/ドキソルビシン/ビンクリスチン/プレドニゾロン)とリツキシマブとの併用療法が行われています。

他にもシクロホスファミドなどの経口アルキル化剤(欧米ではクロラムブシルが多く使われていますが、日本では保険適用がありません)やフルダラビン(日本ではリンパ腫には保険適用がありません)、クラドリビン(日本では再発例のリンパ腫にのみ保険適用があります)などのプリンヌクレオシドアナログとの併用等が行われています。

しかし、リツキシマブと化学療法の併用療法は、複数のランダム化臨床試験において奏効率および無病生存率等は改善するものの、現在までのところ生存率においては改善が認められていません。つまり、これらの治療法でも一時的な効果はあるものの「治癒」をもたらさないため、今後新規薬剤を含めた臨床研究を行う必要があります。

(a) CHOP療法とリツキシマブの併用 (R-CHOP療法)
現在、リツキシマブとの併用化学療法としては、一般的にCHOP療法が行われています。リツキシマブを2回先に投与し、その後CHOP療法を6コース中2回(3コースと5コース開始前)投与、さらに、CHOP療法終了後2回追加投与した方法では、奏効率95%、完全寛解率55%が得られ、無病生存期間も、CHOP療法のみに比べて有意に長期間であり、有効性が高いことがわかりました。

日本では、リツキシマブとCHOP療法を同時期に投与(R-CHOP療法と呼ばれています)することが、一般的に行われています(表1)。また、がん量が多くなってから(大きながんのかたまりになってから)では、R-CHOP療法の効果が低くなるということもわかってきて、がんのかたまりが小さいうちにR-CHOP療法を開始すると寛解率が高くなり、長期間寛解を維持できる可能性があることがわかりました。

しかし、治療開始9年後のデータでは、残念ながら無病生存曲線は徐々に低下しており、これも治癒をもたらす治療にはならないこともわかってきました。今までのリツキシマブを併用しない化学療法に比べると、長期の寛解が維持できますが、治癒を期待できる治療法ではないこともわかってきました。

(b) CVP(シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾロン)療法とリツキシマブの併用
また、未治療の濾胞性リンパ腫に対して、ドキソルビシンを使用しない「CVP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロン)療法」と「R-CVP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロン)療法」の2つの治療を比較した検討で、リツキシマブを併用したR-CVP療法のほうが、CVP療法に比べて完全寛解率および奏効率が有意に高く、病気が進行する割合がR-CVP療法のほうが有意に低いことが報告されています。

しかし、ドキソルビシンを加えたR-CHOP療法に比べると、やや病気が進行する割合が高くなります。今後、ドキソルビシンが必要かどうかはもう少し検討する必要があります。

(c) プリンアナログ(フルダラビンやクラドリビン)とリツキシマブの併用
日本では、初めて診断された患者さんに対してのプリンアナログの使用は、保険適用が認められていません。そのため、再発された方に使用されていますが、初発患者さんに関しても、今後検討されていくと思います。リツキシマブとの併用では、免疫抑制による副作用が強く出ることがあり、感染症にかかる率が高いという報告もあります。

表1 R-CHOP療法
リツキシマブ375mg/m2、点滴投与 (CHOP)療法の前日、あるいは同日)
シクロホスファミド750mg/m2、点滴投与  第1日目
ドキソルビシン50mg/m2、点滴投与  第1日目
ビンクリスチン1.4mg/m2、静注  第1日目
プレドニゾロン100mg/body、経口投与  第1日目から5日目

表2 濾胞性リンパ腫、非隣接病変のII/III/IV期の治療方針
1. 治療の延期と注意深い観察:Watchful Waiting(症状が無い患者さんに対しては、病勢進行までの無治療経過観察)
2. リツキシマブ単独投与
3. リツキシマブと化学療法の併用
  1) R-CHOP療法:リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン
  2) R-CVP療法:リツキシマブ+シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾロン
4. 経口アルキル化剤(ステロイドを併用、または併用しない): シクロホスファミド、クロラムブシル(日本では保険適用なし)
5. 多剤併用化学療法単独
  1) CVP:シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾロン
  2) CHOP:シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン
 

今後日本でも行われる可能性がある治療法
6. プリンヌクレオシドアナログ:フルダラビン、クラドリビン

7. プリンヌクレオシドアナログ+リツキシマブ
  1) R-F:リツキシマブ+フルダラビン
  2) R-FM:リツキシマブ+フルダラビン+ミトキサントロン
  3) R-FCM:リツキシマブ+フルダラビン+シクロホスファミド+ミトキサントロン

8. 放射標識されたモノクローナル抗体療法:イブリツモマブ(イットリウム-90標識)およびトシツモマブ(放射性ヨウ素131標識):再発または難治症例で骨髄のリンパ腫細胞が、25%未満または血小板数が10万以上など、骨髄予備能が低下していない症例に限る

(4) 自家造血幹細胞移植併用大量化学療法
初発の進行期には、日常的には実施すべき治療ではありません。
リツキシマブが使われる以前は、自家造血幹細胞移植を行うと生存率が延長するという報告がありました。

しかし、リツキシマブとCHOP療法の併用により、長期間の無病生存が得られるという報告が出てからは、自家造血幹細胞移植を初発から行うことは推奨されていません。その根拠としては、ランダム化比較試験でR-CHOP療法と大量化学療法との間で無病生存率の差がないこと、

また、自家造血幹細胞移植が生存期間に関しては明らかな延長を認められず、再発リスクは持続すること、濾胞性リンパ腫患者の生存率はリツキシマブなどの抗体療法により改善していること、後に骨髄異形成症候群あるいは急性白血病などの二次がんの発生をもたらすことがあるため、急性的/慢性的毒性が強い治療をルーチンに使用するだけの十分な生存率の改善が得られていないこと等があげられています。

参考文献

悪性リンパ腫治療マニュアル(平野正美、飛内賢正、堀田知光編).南江堂. 2003.
悪性リンパ腫-臨床と病理-ALTSGの研究から-.先端医学社(平野正美;監修、成人リンパ腫治療研究会;編集).2005.

http://ganjoho.ncc.go.jp/public/cancer/data/follicular_lymphoma.html#prg2

フルダラ+ノバントロン導入療法後セヴァリン強化療法

フルダラ+ノバントロン導入療法後セヴァリン強化療法は濾胞性リンパ腫に100%寛解率をもたらすCancer Consultants2006/12

イタリアの研究者は、少なくとも部分寛解または完全寛解(100%)を得た患者に、フルダラ(フルダラビン)[Fludara (fludarabine) ]とノバントロン(ミトキサントロン)(FM)[Novantrone (mitoxantrone)]の経口投与導入療法に、セヴァリンの追加治療をすることによって、100%の完全寛解率が得られたと報告した。この研究の詳細は、2006年の米国血液学会会議で発表された。

セヴァリンは、チウキセタン(MXDTPA)に接合されたマウスIgG1カッパモノクローナル抗体で、イットリウムやインジウムをキレート化し、Bリンパ球のCD20分子をターゲットにする。リツキサン (リツキシマブ)250mg/m2は通常セヴァリンによる治療が始まる7日前と、1日前に投与される。セヴァリンは、用量によって幹細胞サポートを行いながら投与することができる。標的化ラジオアイソトープを使用する根拠は、さらに特異性の高い放射線治療を行うことにより、毒性を減少させるためである。

完全寛解を得ることは、濾胞性リンパ腫患者の、最終的生存を予測するうえで重要な判断材料である、という新たな研究結果が報告されている。いくつかの研究は、完全寛解を得るためには、初期診断時に早期積極的治療を行うことが、現在の治療法において、もっとも有効である、と示唆している。米国血液学会会議で研究者グループは、濾胞性リンパ腫患者に完全寛解をもたらすための、一次治療の各種投薬計画の有効性についての評価を発表した。著者は、2421人の濾胞性リンパ腫患者における、化学療法のみによる治療、化学療法とリツキサン、フルダラ、または放射免疫療法の併用による治療(セヴァリンと、化学療法またはフルダラの併用)に関する25の論文を評価した。一番高い寛解率は、セヴァリン放射性免疫療法(79%)によって得られたと報告された。これに比べ、リツキサンによる投与計画は53%、フルダラによる投薬計画は68%の寛解率を得た。また、完全寛解を得た患者は、病気悪化の危険性が低かった。

この研究は、62人の未治療の低悪性度濾胞性リンパ腫患者における、フルダラ経口投与-ノバントロン(FM)による導入療法後の、セヴァリン強化療法を評価した。患者は6サイクルのFMを受け、4~6週時に再度評価された。計41人の患者が、FM後に完全寛解率73%と部分寛解率27%と評価された。よって、全ての患者がセヴァリンによる強化療法を受けた。全ての部分寛解患者は、セヴァリン投与後完全寛解になり、総体的完全寛解率は100%になった。全体的または無増悪生存率に関するデータは発表されなかった。

同研究者グループは、26人の未治療低悪性非濾胞性リンパ腫患者における、FMとセヴァリン追加療法の有効性について評価した。この2つの試験の大きな違いは、濾胞性リンパ腫患者にはフルダラが経口投与され、一方、非濾胞性リンパ腫患者には静脈内投与がされた。これらの患者は6サイクルのFM治療を受け、4~6週目に再度判定された。少なくとも部分寛解を得た患者はセヴァリンによる治療を受けた。FM治療後、完全寛解率は50%で、部分寛解率は31%であった。FMとセヴァリン治療の療法を受けた17人の患者が、評価可能であった。このうち、13人 (73%) の患者はFM後に完全寛解であり、この数字が(ゼヴァリン治療後に)88%に増えた。(部分寛解2例が、完全寛解を得た。) 全体的または無増悪生存率に関するデータは発表されなかった。

コメント:これらの研究結果は、フルダラ導入療法とセヴァリン追加治療は、低悪性リンパ腫患者に完全寛解をもたらすのに、とても有効な方法であると示唆し、最終的に、全体的生存率と無増悪生存率を向上させる可能性がある。

******

(ラスコ 訳・Dr.Saru 監修)

 c1998- 2006CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.

これらの資料は米国食品医薬品局(FDA)により承認されていない治療製品の使用や投与に関して記載されていることがあります。すべての読者は、個々に記載されている薬剤、療法および治療を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者および出版社は、ここに記載された情報の正確性、または情報の使用、誤用によって起こったいかなる結果にも責任は負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、海外癌医療情報リファレンスとは無関係であり、海外癌医療情報リファレンスによって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はされていません。   

抗癌剤・新薬治療::新療法、レジメン | Back | Page Top

HOME|キャンサーサバイバー|解説コメント|コンタクト|About Us|資料提供サイト

Since 2004/10/5Copyrighticj2004 Cancer info Translation References All rights reserved @Designed by MBI / RSS / Script by Web Liberty

http://www.cancerit.jp/reference/diary.cgi?no=79

悪性リンパ腫の新しい治療と新しい薬

悪性リンパ腫の新しい治療と新しい薬
更新日:2006年10月01日 掲載日:2006年10月01日

1.はじめに
この項では、近年わが国で悪性リンパ腫に対して利用可能となった新しい治療・薬(抗がん剤)について解説します。

2.リツキシマブ(商品名:リツキサン)

リツキシマブは、白血球の一種であるBリンパ球の表面に発現しているCD20抗原というタンパクに結合する抗体として、遺伝子組換え技術によりつくられた薬剤です。CD20抗原はB細胞性の悪性リンパ腫の大多数に存在しており、B細胞性リンパ腫に対する優れた標的です。リツキシマブはこの抗原に結合する(抗原-抗体反応)ことで、直接がん細胞を攻撃したり、生来体内に備わっている他の免疫能を介してがん細胞を死滅させます。マウスで開発された抗体成分の大部分を人間の成分に置き換えた合成薬なので、長く体内に残り、長期にわたって効果が期待できるという特徴があります。

1998年に、アメリカで行われた再発・再燃例の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫に対する開発治験では、48%という高い奏効割合(がんのサイズが半分以下に縮小する割合)が報告されました。わが国でも、患者さんに対する同様の開発治験で61%という奏効割合が確認され1)、2001年9月に保険適用が承認されました。中悪性度リンパ腫の代表であるびまん性大細胞型B細胞性非ホジキンリンパ腫でも、再発・再燃例に対するわが国の開発治験で35%の奏効割合が認められ2)、2003年9月より、「CD20抗原陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫」に対して適応承認が得られています。

このようにリツキシマブは、B細胞性非ホジキンリンパ腫に対して単剤でも高い効果が期待できますが、他の抗がん剤と併用しても副作用が増強されないこと、併用した抗がん剤のリンパ腫細胞に対する薬剤感受性を高めることが知られています。併用療法で用いることで、さらなる効果が期待されます。

このことは、海外で行われた大規模な比較試験によって証明されています。

イギリスで行われた、未治療の進行期低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫を対象とした「CVP療法(シクロホスファミド/ビンクリスチン/プレドニゾロンの併用化学療法)」と「リツキシマブを併用したCVP療法」の比較試験において、奏効割合がCVP療法の57%に対してリツキシマブを併用したCVP療法では81%と、統計学的に明らかな差が認められました。また、30ヵ月の観察期間において、無増悪生存期間(悪性リンパ腫の再発・増悪をみないで生存する期間)がCVP療法15ヵ月に対して併用したほうが32ヵ月と、明らかな延長も認められています3)。

フランスからは、60歳以上の未治療の進行期びまん性大細胞型B細胞非ホジキンリンパ腫の患者さんを対象に、従来の標準的な化学療法である「CHOP(チョップ)療法(シクロホスファミド/ドキソルビシン/ビンクリスチン/プレドニゾロンの併用化学療法)」とリツキシマブとCHOP療法を併用した治療(“「R-CHOP」”と呼ばれます)とを比較した試験の結果が報告されています。そこでは、完全寛解割合がCHOP療法の60%に対して、R-CHOP療法では75%という差が認められました。また、生存に関しても、2年の生存割合がCHOP療法の57%に対してR-CHOP療法は70%と、10%以上の向上が得られたと報告されています4)。このように、従来の化学療法に加えてリツキシマブを併用することの利益は明らかであり、非ホジキンリンパ腫の病型にかかわらずリンパ腫の細胞がCD20抗原陽性であるならば、リツキシマブを併用した化学療法が現在の標準治療と考えられています。

リツキシマブは、初回治療に組み込む以外の使い方でも有用性が示唆されています。低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫の代表である、濾胞性(ろほうせい)リンパ腫の未治療または再発・難治の患者さんを対象に、リツキシマブによって寛解導入治療を行った後に経過観察するグループと、さらにリツキシマブによる維持療法を追加して行うグループについて再発・増悪などが起こるまでの期間を比較しました。リツキシマブを追加しなかったグループは12ヵ月であったのに対し、維持療法として追加したグループでは32ヵ月であったと報告されています5)。

そのほかにも、濾胞性B細胞性非ホジキンリンパ腫に対してリツキシマブを用いた維持療法を行うことで、寛解持続期間が延長するという報告がいくつかあります。その一方で、中悪性度リンパ腫の代表であるびまん性大細胞型B細胞性非ホジキンリンパ腫に対しては、リツキシマブによる維持療法は有効性が認められなかったという大規模な比較試験の報告もあります6)。維持療法が有益であるものとそうでない病型があることには、注意が必要です。

現在、リツキシマブによる維持療法が有用な病型は、濾胞性B細胞性非ホジキンリンパ腫であるとされています。

従来の抗がん剤治療では、がん細胞が減ったようにみえても感度の鋭い遺伝子レベルの検査を用いて調べてみると、微量のがん細胞が検出されるのが常でした。しかし、抗原抗体反応によってがん細胞を攻撃するリツキシマブは、そのような微量の細胞も残さない程度までがん細胞を殺してしまうことも期待できます。

自己造血幹細胞移植を併用した大量化学療法において、リンパ腫細胞の骨髄への浸潤(しんじゅん)が高頻度にみられる濾胞性非ホジキンリンパ腫やマントル細胞リンパ腫では、採取する細胞の中へリンパ腫細胞が混入してしまうことが、しばしば問題になります。そこで、リツキシマブの抗がん効果を期待して、自己造血幹細胞を採取する前に行う化学療法の直後にリツキシマブを併用し、血中にわずかでもがん細胞が残らないようにしてから採取する方法が考案され、臨床応用されています。実際に、この方法を用いた場合には、採取した細胞の中に入り込むがん細胞がなくなることが遺伝子レベルの検査で確認されていて7)、自己造血幹細胞移植後の再発を減らすのに役立つことが期待されています。

3.クラドリビン(商品名:ロイスタチン)
クラドリビンは、がん細胞の遺伝子合成にかかわる酵素を阻害することで効果を発揮する抗がん剤です。欧米において、1980年代後半より低悪性度非ホジキンリンパ腫に対する効果が検討され、再発および難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫に対して、30~50%の奏効割合が報告されてきました。わが国では、再発・再燃または治療抵抗性の低悪性度非ホジキンリンパ腫を対象にした開発治験で58%という高い奏効割合が確認され8)、2002年12月に「再発・再燃または治療抵抗性の低悪性度またはろ胞性B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫」に対して適応承認がなされています。

海外では、未治療の低悪性度非ホジキンリンパ腫に対しても効果が検討され、単剤で80%を超える奏効割合が報告されています。中でも胃に起こった未治療のMALTリンパ腫に対しては、100%の完全寛解割合が報告され9)、一般的に化学療法に対する感受性が低いとされているMALTリンパ腫に対する有用性が期待されています。ただし、わが国においては保険適用の対象外です。

他の抗がん剤との組み合わせとしては、ミトキサントロン、シクロホスファミドとプレドニゾロン、リツキシマブ等との併用療法が報告されています。これらの併用療法では、再発・難治性(報告の一部には、未治療例も含まれる)の低悪性度非ホジキンリンパ腫に対して28~88%の奏効割合が報告されています。再発した患者さんに対する救援療法としての一薬剤にとどまらず、低悪性度非ホジキンリンパ腫に対して重要な位置を占める薬剤となることが期待されています。吐き気や脱毛等の副作用の頻度は少なく、治療を受ける患者さんのQOL(Quality of Life:生活の質)の向上も期待できそうです。

ただ、このように、低悪性度リンパ腫に対して高い効果が認められているクラドリビンですが、注意しなければならない点もあります。がんに対する効果と同時に、正常なリンパ球にもダメージを与えてしまうため、免疫能を低下させてしまい、ヘルペス感染などの日和見(ひよりみ)感染症を引き起こしやすいこと、また、前治療歴が長く抗がん剤の蓄積量が多い場合には、白血球や血小板減少が長引く可能性があること等です。

4.新しい薬
以下に、わが国で開発治験が終了し、近日中に非ホジキンリンパ腫に対して適応承認が見込まれている抗がん剤を紹介します(2006年7月現在)。なお、これらの薬剤の適応については、「再発・再燃または治療抵抗性」が対象になると見込まれています。

1)フルダラビン
フルダラビンはクラドリビンと似た化学構造を持つ薬剤で、クラドリビン同様、がん細胞の遺伝子合成を阻害することで効果を発揮する抗がん剤です。慢性リンパ性白血病に対して高い効果が認められていて、わが国では「貧血または血小板減少を伴う慢性リンパ性白血病」に対して適応承認が得られています。慢性リンパ性白血病は、低悪性度非ホジキンリンパ腫と似通った点のある病気と考えられ、欧米では低悪性度非ホジキンリンパ腫に対してもフルダラビンが検討されてきました。その結果、再発・再燃例の低悪性度非ホジキンリンパ腫に対しても単剤で50%台の奏効割合が認められました。初回治療の場合でも、濾胞性非ホジキンリンパ腫に対して60%以上の高い奏効割合が報告されています。しかし、未治療の低悪性度非ホジキンリンパ腫を対象としたフルダラビンとCVP(シクロホスファミド/ビンクリスチン/プレドニゾロン)療法との比較試験では、奏効割合こそCVP療法の59%に対して76%とフルダラビンが勝っていたものの、増悪までの期間と生存期間は両者の間で差が認められなかったという報告があります10)。単剤での効果が、従来の抗がん剤をしのぐものかどうかは不明です。

単剤でも期待できる高い抗がん効果から、海外では他の抗がん剤と組み合わせた併用療法の研究も進んでいます。ミトキサントロン、デキサメタゾン、シクロホスファミド、リツキシマブ等との併用で、未治療例のみならず、再発・難治例に対しても80~90%もの奏効割合が報告されています。

わが国では保険適用がないために、注射薬であるフルダラビンの悪性リンパ腫に対する検討は行われてきませんでした。しかし、イギリスで開発された内服薬のフルダラビンの開発治験が悪性リンパ腫に対して行われ、完了しています。内服薬にもかかわらず注射薬と同等の血中濃度が得られ、濾胞性非ホジキンリンパ腫を中心とした再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫に対して65%と、欧米の報告と同等の高い奏効割合が確認されています11)。その簡便性から、頻回に通院する必要がなくなり、高いQOLが維持されることも期待されています。しかし、内服薬だからといって決して副作用が軽い訳ではありません。白血球の減少が注射薬と同程度に高い頻度で認められます。帯状疱疹(たいじょうほうしん)などの免疫能の低下からくる感染症も起こりうるため、使用に関しては十分な注意が必要になるでしょう。

低悪性度非ホジキンリンパ腫は経過の長い疾患です。これらの薬剤の高い効果が一時的なものであるのか、それとも長期的な予後の改善をもたらすのかは、現時点ではまだ不明です。しかしフルダラビンは、欧米において低悪性度非ホジキンリンパ腫に対する薬剤の中でも重要な位置を確立しています。わが国においても治療の選択肢が広がることが期待されます。

2)イブリツモマブ

イブリツモマブは、CD20抗体にイットリウムという放射性同位元素を結合させた、次世代の抗体薬として開発されました。リツキシマブにも直接的な抗がん効果はあるのですが、主な作用は人間が生来持っている免疫能を利用してがんを攻撃するというものです。それに対してイブリツモマブは、放射性同位元素から発せられる放射線により、直接的にがんを攻撃するという機序で効果を発揮します。それにより、CD20の発現がそれほど強くないがん細胞や、リツキシマブが届きにくい大きながんの内部に対しても効果が期待されています。アメリカで行われた開発治験では、リツキシマブに対して抵抗性となったCD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫に対しても、単剤で60~70%という高い奏効割合が認められました。中には5年以上の長期間、再発が認められていない例も報告されています12)。わが国で行われた開発治験でも、海外の治験に劣らない効果が確認され、CD20陽性非ホジキンリンパ腫に対する有力な治療手段となることが期待されています。しかし、放射性物質を用いるために、体外被曝(ひばく)の可能性もありうること、正常な血液の細胞も放射線の影響を受けて造血能が落ちてしまう等の問題点もあり、適応に関しては十分な検討が必要となるでしょう。

参考文献 1) Tobinai K. : Clinical trials of a mouse-human chimeric anti-CD20 monoclonal antibody (rituximab) for B cell non-Hodgkin’s lymphoma in Japan. Cancer Chemother Pharmacol 48 Suppl 1:S85-90; 2001
2) Tobinai K, Igarashi T, Ohashi Y, et al. : Japanese multicenter phase II and pharmacokinetic study of rituximab in relapsed or refractory patients with aggressive B-cell lymphoma. Ann Oncol 15:821-30;2004
3) Marcus R, Imrie K, Smith P, et al. : CVP chemotherapy plus rituximab compared with CVP as first-line treatment for advanced follicular lymphoma. Blood 105;1417-23:2005
4) Coiffier B,Lepage E,Briere J,et al. : CHOP chemotherapy plus rituximab compared with CHOP alone in elderly patients with diffuse large-B-cell lymphoma.N Engl J Med 346;235-242:2002
5) Ghielmini M, Schmitz SF, Cerny T, et al. : Prolonged treatment with rituximab in patients with follicular lymphoma significantly increases event-free survival and response duration compared with the standard weekly x 4 schedule. Blood 103;4416-23:2004
6) Hamermann TM, Weller EA, Horning SJ, et al. : Rituximab-CHOP versus CHOP alone or with maintenance rituximab in older patients with diffuse large B-cell lymphoma. J Clin Oncol 24;3121-7:2006
7) Magni M, Di Nicola M, Gianni AM, et al. : Successful in vivo purging of CD34-containing peripheral blood harvests in mantle cell and indolent lymphoma: evidence for a role of both chemotherapy and rituximab infusion. Blood 96;864-9:2000
8) Ogura M, Morishima Y, Tobinai K, et al. : Durable response but prolonged cytopenia after cladribine treatment in relapsed patients with indolent non-Hodgkin’s lymphomas: results of a Japanese phase II study. Int J Hematol 80;267-77:2004
9) Jager G, Neumeister P, Raderer M, et al. : Treatment of extranodal marginal zone B-cell lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue type with cladribine: a phase II study. J Clin Oncol 20;3872-7:2002
10) Hagenbeek A, Eghbali H, Marcus R, et al. : Phase III intergroup study of fludarabine phosphate compared with cyclophosphamide, vincristine, and prednisone chemotherapy in newly diagnosed patients with stage III and IV low-grade malignant Non-Hodgkin’s lymphoma. J Clin Oncol 24;1590-6:2006
11) Tobinai K, Watanabe T, Hotta T, et al. : Phase II study of oral fludarabine phosphate in relapsed indolent B-Cell non-Hodgkin’s lymphoma. J Clin Oncol 24;174-80:2006
12) Gordon LI, Molina A, White CA, et al. : Durable responses after ibritumomab tiuxetan radioimmunotherapy for CD20+ B-cell lymphoma: long-term follow-up of a phase 1/2 study. Blood 103;4429-31:2004

http://ganjoho.ncc.go.jp/public/cancer/data/ML_new_therapy.html